私の吉幾三問題。
先日からの話題の続き。
http://d.hatena.ne.jp/Bushdog/20071007/p1
http://d.hatena.ne.jp/Bushdog/20071008/p1
このテの話を読むといつも思い出すのは、宮台真司言うところの「吉幾三問題」だ。
google:"吉幾三問題"
宮台、東浩紀の〒（郵便）本を語る その２ - MIYADAI.COM
http://www.miyadai.com/texts/azuma/02.php
吉幾三問題とは、こういうお話：
- 吉幾三は上京したての頃、喫茶店でバイトをしていた事があった。
- ある日、その喫茶店のマスターが外出してしまい店員が吉幾三一人になったことがあった。
- そこに客がやってきて、「ウインナーコーヒー」を注文した。
- 吉幾三はウインナーコーヒーとは何かを知らなかったが、「ウインナーコーヒーというからにはウインナー＋コーヒーだびょん」と考えて、コーヒーと炙ったウインナーソーセージを出した。
- 客は何も言わずにその「ウインナーコーヒー」を飲み、食べて、帰っていった。
- 吉幾三は店長が帰ってきてからこの件を報告して、怒られた。
- だが、帰っていった客は、「ウインナーコーヒー＝ウインナー＋コーヒー」と覚えたままかも知れない。
（ちなみに、俺は上記リンク先の宮台真司の話は難しくてよく分からないので、俺に会っても宮台とか東浩紀とかの話題を振らないように！たのむよ！）
この話のポイントは「注文した客も、実は『ウインナーコーヒーとは何か』を知らなかった」ということにある。その客は喫茶店のメニューに書かれた「ウインナーコーヒー」という文字を見て、何だか分からないけれども注文してみて、コーヒーとウインナーソーセージが出てきたのでこういうもんなのかと思って食べて、カネを払って帰っていったわけである。
吉幾三は喫茶店の店長が帰って叱られたせいでウインナーコーヒーが「ウインナーソーセージ＋コーヒー」ではない、ということを知ったわけだが、店長が帰ってくるまでの間、吉幾三と客だけのセカイ（なんだか気持ち悪いな）の中では、ウインナーコーヒーは「炙ったウインナーソーセージを付け合せにしたコーヒー」として存在していたわけだ。
そして、帰った客はそのまま暫くは「ウインナーコーヒー＝炙ったウインナーソーセージを付け合せにしたコーヒー」として認識していたはずだし、もしかすると何日か、ことによると何年も、そういう風に覚えていたかもしれない。
先日の日記のネタでいうと、「沖縄 雲 神の手」等でググってみると「いつか沖縄の、あの神の手の雲が広がる下をドライブしてみたいな」なんてブログにぶつかる。その人は「吉幾三のウインナーコーヒーを食った客」だといえるのではないか。
ことほどさように、ヒトがコトバを把握することとかセカイを認識するとかいうことは不確かなものであって、思想や哲学の論議ではここから先は、「コトバや世界はそこそこ上手く回ってるんだから結果オーライ」とか「誤配でも世の中成り立つからＯＫ」とかあとは「じゃあ致命的な問題が起きないままそこそこ回ってくのはなぜ（何）か？」とか言う論議が展開していくんだと思うのだが。
ただし。
こと音楽に関しては、特に俺のブログで取り上げられるような抽象的な／前衛的な／コンセプチュアルな／etc、というコトバで形容されるような音楽では、それはそのままにしておいていいのか。結果オーライでよいのだろうか。
例えば。
俺のブログを読んでいただいたかたから、「面白かったです」「矢野さんのブログ読んで○○聴きました、凄く良かったです」「ライブ行ってよかったです」ということを言われる事がある。これは本当に名誉でありがたいことであって、こういうブロガー（なのか？俺）冥利に尽きる、もう泣きそう、と思うこともしばしばだ。
だが、そんなアナタに、敢えて聞きたい。
もし俺が吉幾三だったらどうする。
俺のブログの記事が「吉幾三が考えたウインナーコーヒー」だったらどうするんだ。
だとすると俺のブログを読んでいるアナタ！アナタは「吉幾三のウインナーコーヒーを飲み食いして帰っていった客」かも知れないではないか！そうではないとどうして言える？自分が「吉幾三のウインナーコーヒーを食った客」でないと証明するすべはあるのか？
そして更に！俺の文章を読んで自分でブログやmixi日記で語ったり、ブログを引用したりトラックバックを投げたり、はたまた友達と話したりしたそこのアナタ！
今度はアナタが吉幾三になる番だ！！
思い当たる節のある奴は、男だったら、次のデートで必ず彼女に「隠しててゴメン……オレ、実は吉幾三なんだ……」とカミングアウトするように！女性だったら、カラオケのレパートリーに森高千里の『私が吉幾三になっても』を追加するように！絶対だぞ！約束だからな！
