NHK BS「歌伝説 ちあきなおみの世界」


いや凄かった。モイーズさんに感謝。ちあきなおみがこんなにクリエイティヴで凄い歌手だとは知らなかった。


歌伝説 ちあきなおみの世界
http://www3.nhk.or.jp/omoban/main1106.html#20051106014

ちあきなおみ。平成4年に一切の芸能活動を休止して今年で13年になるが、毎年のようにベスト版が発売されるなど、その人気は衰えることを知らない。
 1969年、「雨に濡れた慕情」でデビュー以来、その歌唱力とたぐいまれなるその表現力は多くの歌唱ファンを魅了した。歌唱ジャンルはポップス、演歌、シャンソン、ジャズ、フォーク、民謡……に及んだ。独自の輝きを放ち、強烈な印象を与える歌手「ちあきなおみ」は、ドラマ、映画、舞台にも出演し、役者としての評価も高かった。
 NHKの豊富な過去歌唱映像などを駆使し「ちあきなおみ」の魅力に迫る90分の番組。

たっぷり90分、ほぼNHKの秘蔵映像だけで構成されたドキュメンタリー。解説とナレーションは最小限で、曲を途中でカットしないのはありがたかった。



圧倒されたのは浅川マキ訳詩(!)の「朝日の当る家」。かの有名な黒人民謡をわざとかすれた声で歌うところは、はっきりジャニス・ジョプリンを意識した歌い方で、鳥肌がたった。


アングラ演劇か長嶺ヤス子ばりに髪を振り乱した振り付けで歌う「夜へ急ぐ人」が友川かずきの作曲だと初めて知った。この曲はお茶の間に相当なインパクトを与えたらしく、ナンシー関は「ちあきなおみが気が狂ったと思った」らしい*1し、俺のお袋は紅白を観て「あの後夢に見ちゃった」と言っていた。さぞかし嫌な初夢だったろう(笑)。


ファドをレパートリーに取り入れたのが既に昭和の頃だというのも相当早い。一般に音楽ファンにファドの名が知れ渡ったのはいわゆるワールドミュージックの流れで「ミュージック・マガジン」で盛んに紹介してから以降のはずだし(つうか俺が知ったのがそれくらいなんだけど。遅い?)


あと、半分語り・半分歌の一人芝居みたいになってる「ねぇあんた」という曲なんて、中島みゆきの「夜会」のパフォーマンスの元ネタなのではないか?なんて勘ぐりたくなる。


是非とも地上波で再放送きぼん。


ちあきなおみ非公認・私設ホームページ:ちあきの部屋
http://park15.wakwak.com/~chiaki_naomi/


あと、モイーズさんが日記であげていたこちらも参考に。


【音ヲ遊ブ】11月の鈴木治行のすべて 2001
http://www.netlaputa.ne.jp/~hyama/db/suzuki/subete0111.html

大雑把に図式化すると、戦後の日本の歌謡曲はほとんどシンコペーションのないシンプルな農耕民族的2、4拍子+クラシック的歌唱法直立不動スタイルから始まって、それが徐々にアメリカナイズされてゆく過程として捉えることができる。80年代くらいにそれがほとんど飽和状態にまで至った時にジャンルとしての歌謡曲は消滅したが、その「日本的なるもの」と「異質なもの」とのブレンドの比率が一番絶妙だった時代が60年代後半から70年代一杯くらいまでで、このあたりの歌謡曲が僕には一番面白い。ちあきなおみの歌はその「歌謡曲性」の濃さ故に感動的なのだ。

いや、鈴木氏の毎度の慧眼にはほとほと感服つかまつります。