【5/31加筆訂正】教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史

ドッグイヤー”と呼ばれるくらい変化や栄枯盛衰の激しいWEBの世界で、俺がお世話になっている音楽系サイトの皆さんは、俺がネット・デビューした頃からずっとコンスタントに活動を続けられている。ここに尊敬と感謝を込めて、ご紹介さしあげる次第である。


Mikikoさんのサイトが5/25で開設9周年を迎えた。
Le Site de Louis Sclavis
http://sclavisfansite.jp/index.html

フランスの卓越したマルチリード奏者ルイ・スクラヴィスのファンサイト、というだけでなく、フランス/ヨーロッパのポスト・フリー・ジャズ系音楽に関する世界でも有数のWEBサイト。


90年代後半のフランス・ポスト・フリー・シーンはホント面白く(今でも面白いが)、俺、物凄い勢いで輸入盤屋巡りをしてた思い出がある。俺の好きな音楽要素が全部入ってる、みたいな。レコメン系複雑アンサンブルあり、民族音楽あり、フリー・ジャズあり、ヘンテコなミュゼットやキャバレー・ミュージックみたいな要素あり、と。あんなに輸入盤買ったのは80年代のニュー・ウェーヴ/オルタナブーム以来だった(笑)。


これにハマッた原因が、岡島豊樹氏が編集長をやってて、大里俊晴氏や福島恵一氏がレビュアーだった頃の「ジャズ批評」誌と、Mikikoさんのサイトだった。


初期の日本のインターネットでは、ニフティ・サーブからWEBに進出した人が多かった。Mikikoさんのサイトもそのひとつ。俺は“ニフ者”ではなかったが。同じフォーラムから進出した人達のサイトが更新停止したり閉鎖したりする中、コンスタントに更新され続けているのが素晴らしい。


最近はフランスの面白いWEBラジオやストリーミング放送のチェックのお世話になっとります。俺フランス語わかんないんで、あっちのサイトに行くとどのボタンをクリックすればいいかも分かんなくなっちゃうんでね(汗)


津下さんのサイトが5/28で開設10周年を迎えた。
tsuge's free improvisation
http://www1.harenet.ne.jp/~tsuge/

ここを知らないのはモグリだろう。"free improvisation" で日本語のページをググると冒頭に出てくるし。リンクが充実しているので、俺はフリー系音楽のポータルサイトとして使わせていただいていた。


今、マイミクになっていただいてる人やミュージシャンの皆さんとも、だいたいこちらの掲示板が出会いのきっかけ(こう書くと出会い系サイトみたいだ(笑))である。フリー・ジャズ、インプロ、実験音楽etc に興味のある者にとって、こちらのサイトが今のmixi のような役割を果たしていたことは間違いない。


山本さんによる日本の現代音楽のサイトは5/20で開設10周年を迎えた。
音ヲ遊ブ
http://www.netlaputa.ne.jp/~hyama/

日本の現代音楽といえば、いわゆる現代音楽っぽいああいう響きの音楽――ヒドい言い方だが、要はいかにもNHK FMの番組“現代の音楽”にかかりそうな曲――だろうという偏見と先入観を打ち砕いて俺に衝撃を与えたのがこのサイト。俺はここで、鈴木治行、山本裕之、川島素晴三輪眞弘etc といったラディカルな作曲家を知ったのである。純粋にかっちょいい電子/テープ音楽から、正しくフルクサスの衣鉢を継ぐ、笑うしかないパフォーマンスまで。知力の限りを尽くして変な音楽(←褒め言葉です、念のため)を作っている人たちがここにいる。


中野さんによる武満徹のサイトは来月開設10周年を迎える。
Toru Takemitsu, his music and philosophy
http://www2a.biglobe.ne.jp/~moyse/

日本が誇る作曲家、武満徹のメモリアルWebページを10年にわたって主催されている。コンテンツも非常に豊富で、資料・史料的価値は極めて高い。特に、MP3による武満の肉声は必聴である。


松本さんのサイトは、今年10月で開設10周年を迎える。
バーバー富士
http://members.jcom.home.ne.jp/barberfuji/


世界中のフリー・ジャズ、フリー・インプロヴィゼーションの音楽家から "The World Famous Barber Shop" と賞賛と敬意を集める上尾の床屋さん「バーバー富士」。


えーと、いまだにあちこちで質問されるのだが(苦笑)こちらは“バーバーという名前を冠したライブハウス”ではなく、本当の現役の床屋さんである。店主の松本さんが、理髪店の定休日である月曜日にお店を開放して、即興系アーティストのライブを開いているのである。(海外では、ここで撮ったルイ・スクラヴィスの写真が写真家集団“マグナム”のライブラリーに登録されたときに "Barber Fuji, the Concert Hall" というキャプションがついちゃったのが誤解が広がった原因のような気がする(笑))


それでは実際にアーティストが散髪やシャンプーをしてもらっているところをご覧下さい。超笑える。
http://members.jcom.home.ne.jp/barberfuji/impro.html


欧米では、どうやらアーティストの口コミで評判が広まっているらしい。「ここのことどうやって知ったんですか?」と聞いたら「○○フェスの楽屋でフィル・ミントンから聞いたのさ」と答えてくれたのは誰だっけな。ジョン・ブッチャーかアシーフ・ツァハーだったかな。今や即興系のアーティストにとって演ってみたい場所とは "BUDOKAN" でも "TOKYO DOME" でもなく "BERBER FUJI" だ(笑)!


ここの良さは、とにかく至近距離で一流アーティストの演奏に接することができることだ。サックスならキーを鳴らす音まではっきり聞こえ、コントラバスなら床を伝って重低音の振動が足に伝わり、筝なら“胴鳴り”の響きがゴォッと伝わるのである。あと、これは偶然のようだが、音響を考えて設計してあるわけではないのに意外なほど“ハコ”として音が良い。演奏した皆さん揃って、“部屋のレゾナンスが良い”という。


とにかく、十数年にわたる(!)過去の演奏記録を見て驚け。そうそうたるメンツだ。
http://members.jcom.home.ne.jp/barberfuji/HISTORY.html


Web通販でCDショップも開いており、アーティスト本人から委託された日本ではここでしか手に入らないレアな音盤も。海外からの注文も多いとか。一度覗いてみ。
http://members.jcom.home.ne.jp/barberfuji/


森本さんのサイトも今年で開設10周年を迎えるはずである。
森の周辺
http://olive.zero.ad.jp/~zbh80402/


勇ましいコトバや大袈裟な物言い(俺んトコもか?笑)や独り善がりな自分語りが跳梁跋扈するWEBにおいて、森本さんの淡々として抑制の利いた文章には、昔から本当に心が洗われる気持ちがしていた(お世辞じゃないっす)。まさに「森の周辺」というタイトルがピッタリである。


「現代音楽とその周辺」というコンテンツを読むと、もう今や伝説的とも言うべきコンサートに行ってらっしゃるんだよな。羨ましい。
http://olive.zero.ad.jp/morimotos/cmusic/index.html



皆さん、おめでとうございます!そしてありがとうございます!


僕にとっての初期インターネットは、ワレズでも“ぁゃしぃわーるど”でもアングラサイトでもエロサイトでもなく(ホントか(笑)?)まさに皆さんのサイトのことでした。


僕が今WEBでグダグダやっていられるのも、ひとえに皆さんのおかげです。皆さんの活動が無かったら、WEBにおける音楽の情報は、ひどく貧しいものになっていたに違いありません。僕がどれだけ感謝・リスペクトしていることか。どれだけ感謝してもしきれない。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。


ところで...もしかして、皆さん、けっこうご自分たちでも10周年とか、忘れてます...?
(^-^;;;