クリスチャン・マークレイの新作は何と

オルゴール。

大上氏の月例ライブにはずっと、デレク・ベイリーインプロヴィゼーション」の訳者(共訳)で、1981年のMMD計画(ミルフォード・グリーブス、田中民、デレク・ベイリーの競演)の招聘やPlan-Bやアートキャンプ白州のディレクションをされている木幡和枝さん*1が来ているそうなのだが、その演奏の打ち上げのときに木幡さんに見せていただいた。


白木で出来た手の平に乗るくらいの箱。何の装飾もペイントもされていないが、蓋に焼印で "SILENT" と押されている。そんで蓋を開けると内側に "LISTEN" という焼印が押されていて、オルゴールが鳴り始める。憎い演出だ。


ところで、 "SILENT" と "LISTEN" って、アナグラム(綴り変え)だって知ってた!?こんな基本的な英単語、知って30年以上立つのに、気づかなかったよ〜!


オルゴールでかかる曲がマークレイ作曲の新曲らしいのだが、これがまた何とも奇妙な、捉えどころのない不思議な音楽だった。パターンがあるわけではないので、ミニマル・ミュージックではない。というか聴いててもメロディをうまく捕まえられないので、どこが始まりでどこが終わりなのかよくわからず、一回終わってまた始まったかどうかが、よく分からない。


それから、オルゴールだから、だんだんゆっくりになってくるんだけど、テンポが速いときと遅くなってきたときで、曲の様相が変わるの。単に「曲が遅くなってきた」んじゃなくて、遅くなってきたことによって「別の音楽」に聴こえてくるの。これが不思議。


いやぁよく思いつくなぁこういうの。クリスチャン・マークレイって、ホント、クレバーなアーティストだよなぁ、とつくづく思った次第。このオルゴール、NYのギャラリーで買ったら幾らするんだろう(笑)


んで、その打ち上げの席で木幡さんに色々お話をうかがったのだが、その中に当然、デレク・ベイリーの話も出てきたのだった。「今はロンドンにいるの」「あれ、バルセロナに住んでるんじゃありませんでしたっけ」「うん、ちょっと具合が悪くてイギリスに戻ってるみたい」なんて会話を交わしたのだが....。


まさかその2日後に、訃報に接するとは、思ってもみなかったよ....。

*1:今は芸大の「先端表現科」という所の教授をされてるんだってね。