康・島田@八丁堀七針
ギターの康勝栄氏とヴァイオリンの島田英明氏のライヴを聴きに、八丁堀にあるギャラリー「七針」に行ってきた。
七針
http://www.ftftftf.com/
http://ftftftf.sblo.jp/
康勝栄
http://www.katsuyoshi-kou.net/
島田英明
http://www.digitalviolin.com/Players/Shimada.html
http://www.lethe-voice.com/2002/1005_3_shimada.html
それにしても、あんな所にギャラリーがあって、ライヴが頻繁に開催されてるなんて全然知らなかった!女房は以前あそこのすぐそばに勤めてたし、夫婦で買出しに出る際に自転車で通ったりしてたのに。一昨年(2006年)オープンしたのか。
こじんまりしたギャラリースペースで、千駄ヶ谷 Loop-Line の半分くらい、下北沢 lete の3分の2くらいの広さかな。適度に反響するスペースで、これはアコースティック楽器、特に弦楽器は映えそうだ。実際、音は良く響いてた。前は雀荘だったらしいが、これでは麻雀牌の音が相当五月蝿かったのではないか(当時は当然カーペットとか敷いてあっただろうが)。
AGENCEMENTの名前で知られる金沢在住の伝説のアヴァン作家・島田英明(しまだひであき)が、たぶん10年(?)ぶりの東京でのライブです。
(mixiでの告知文より)
いや、「たぶん10年ぶり」ってことはないだろう。(^_^;)5年ぶりくらいかも知れないが。ジョン・ブッチャーの来日(2002年)の際にブッチャーと共演してるはずだし(俺はは聴けなかったが)。
俺が島田氏のヴァイオリンを聴いたのは2000年前後、「麻布Deluxe」(六本木 Super Deluxe の前身)でだったと思う。ブレット・ラーナーが企画してた「Deluxe Improvisation series」だったかも知れない。確か外人のエレクトリックギターの人が来てて、齋藤徹氏とあと何人かのセッションだったと記憶するが、なにしろこの外人さんが眩暈がするほどつまんなくて、しかも典型的なただメンツ集めただけの寄せ集めセッションで、なんだこりゃ(;´Д`)というような内容だったのであった。企画としてどうよ、みたいな。齋藤さん終わったらとっとと帰ってたもんな。ライブ後島田氏にその思い出を話したら「あの時は体調も機材も調子が悪くて…」と言っていた。なるほど。
それはさておき。この日の演奏は二人とも完全アコースティック。康氏はギブソンの古いフルアコースティック・ジャズ・ギター(カッタウェイの無いタイプ)。張ってある弦がぱっと見てちょっと普通と違っていて、最初は「細い弦→太い弦→細い弦」という変則チューニングにしてあるのかと思った。後で聞いたら、6弦から「ナイロン弦2本・スティール弦2本・ナイロン弦2本」(!)と張っていたらしい。「嫌いな響きを省きたかった」とのこと。島田氏もリングモジュレータ等は使わずにヴァイオリンのみ。
休憩を挟んで3セット。3セット目は、「ちょっと録音してみようと思います」ということで急遽(?)ライヴ・レコーディングとなった。
康氏のギターは、張ってある弦から想像がつくように音の伸びのないパキパキ・コキコキ・ペケペケとした音。でも聴いていて気持ちがいい。
島田氏のヴァイオリンは、ブリッジ際ぎりぎりの所をかなり強い弓圧で弾くという演奏がメインのようにお見受けした。この弾き方だと出音が倍音成分の非常に多い金属的な響きになる。この日は電気的な音ではないが、以前聴いたリングモジュレータを通した演奏も同様のメタリックな印象のサウンドで、島田氏の嗜好がうかがえるのが興味深い。
二人とも特に超絶技巧やいわゆる「特殊奏法」の類を披露するわけではない。フラジオレット(ハーミモニクス)とか、ブリッジとテイルピースの間を弾いてパキーン、ギシギシと甲高い音を出すくらいか。で、一貫して同じような音を出してると言えばそのとおりなのだが、これが不思議と全然飽きない。
俺の経験則として、優れたフリー・インプロヴィゼーションの演奏には2つの特色が顕れる。それは:
- シンプルな演奏を繰り返していても全然飽きず、繰り出される音が常に新鮮である
- 複数の演奏者がてんでバラバラに演奏して、何の合図も決めていなくても、同時に演奏が終わる
というものだが、この日の演奏はまさにそういうものだった。特に1セット目は数分間の短めの演奏が幾つか、という流れだったのだが、 なぜかテレパシーのようにスパッと終わるのである。俺は当初てっきり事前に分数か終わりの合図が決めてあったのかと思ったが、まったく打ち合わせなしだったそうな!
この日の白眉は3セット目の録音した演奏。終演後、観客・演奏者の奏法にえもいわれぬ高揚感が満ちていた。あのような演奏に触れることこそが、フリー・インプロヴィゼーションの演奏に触れる喜びというものだ。先日の山内・入間川デュオといい、この日の演奏といい、新年早々素晴らしい演奏を聴けて俺は幸福である。こいつは春から、あ、縁起がいいわい(笑)。
ライヴに来ていた松本健一氏のブログにもこの日の感想が。
http://www.geocities.jp/takuhatsu/
http://takuhatsu.seesaa.net/
康勝栄さんはまだ非常に若いのにいいな。見所があるな。これからチェックして聴くことにしよう。豊住さんとも演ってるんだよな。凄いな。年齢差いくつだろう。全然分け隔てしないオープンでフランクな豊住さんも凄いが。島田さんももうちょい頻繁に東京できいてみたいなぁ。