入間川・増田@新井薬師前SPECIAL COLORS


ちょっと日にちが経ってしまったが、1/26入間川+増田デュオに行ってきた。


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1月26日(土)series Compassion (共感共苦)#1

series Compassion(共感共苦)について

基本的に二人でおこないます。
まず最初に一人の奏者が演奏を始めます。
その演奏中の任意の時間にもう一人の奏者が音をかぶせます。
この奏者は自由に音の出入りができます。
またこの演奏の決着は最初に始めた奏者がとります。
時間は20分強くらい、終了後、奏者の順番を変えて繰り返します。

その後休憩を挟んで改めて今度は二人同時に演奏します。

以上のことは基本的に即興で行います。

実はこの試みは、以前河崎氏との江古田での演奏で試してみたことがあります。
手応えもあり、自分の抱える「即興演奏」という問題への新たな提起となりそうでした。

というわけで、series Compassion (共感共苦)として何人かの音楽家と試みていこうと思います。

まず最初は私が即興演奏を始めたときからの友人である増田直行氏にご登場いただきます。

  1. 入間川(cello)+増田(guitar)
  2. 入間川(cello)+増田(guitar)
  3. 入間川(cello)+増田(piano)


増田氏は前半はアコースティック・ギターヤマハの古いフォークタイプ)、後半はピアノ(Special Colors備え付けのアップライト)。


演奏の展開はこんな感じ:

  • 入間川:弓で叩くように弾く+左手ハンマリング
  • 増田:ギターの本体側を弾かずにペグ(糸巻)から余った弦をはじいてシャラシャラと鳴らす+ペグ/ナット間の弦を弾く
  • 入間川:高音のアルコ。クレッシェンドして不意に消える、ドップラー効果のような音
  • 増田:硬い音色のピッキングハーモニクス
  • 入間川:小さい音で、不安を煽るようなヴィブラート→徐々に音量大きく
  • 増田:訥々とした単音のラインを弾く→徐々にコード弾きに移行
  • 入間川:高速のパッセージ→いきなりブレイク
  • 増田:再び単音フレーズ

  • ヴェーベルンシェーンベルク風ピアノ
  • 間を長くとって、高音/低音の1音を交互に→ハラハラと高音
  • 入間川:高域中心にフリーに高速に弾きまくり
  • 中低音でギシギシと耳障りなアルコ
  • 高音でパタパタという短めの音を断続的に
  • 不協和音で高音域から徐々に降りてくる
  • サティや初期ケージのピアノ曲を思わせる、どこかメランコリックなピアノの爪弾き


この日は、緊迫感を湛えたハイレベルな即興演奏の交感になる瞬間と、ちょっとこれはどうかな、という瞬間が交錯するような展開になったと思う。


これはどうかな、と思ったのは、増田氏の演奏のジャカジャカやるギターのストロークやピアノでゴーンと低域をドローンのように鳴らしたとき、どうしても入間川が「上モノ」に聴こえてしまうというところだ。増田氏がどうの入間川氏がどうのという問題ではなく、聴衆側の問題、つまり人の耳はそう聞いてしまうものだという点もあるのだが…。


ただ、やっぱピアノのという楽器はいわゆるフリーっぽい即興演奏においてはけっこう厄介な存在なんだよな、という感を新たにした。それはギターのコードストロークも同様で、特にジャッカジャッカとシャッフルのリズムを刻まれたりしてしまうと、そこには必然的に「線的(リニア)に動く時間の流れ」が発生してしまう。そのような時間の流れは入間川氏の演奏には存在していないので、異なる時間の流れが並列しているような違和感というか異物感のようなものを感じてしまった。それがお互いの演奏に「異化作用」のような効果をもたらしているのならそれはそれで興味深い展開になったのだろうが、この日はそうとは言い難い…。


ラルフ・タウナーを彷彿とさせる清冽な増田氏のギター(あ、ピアノも弾くからエグベルト・ジスモンティか?)と、流れや展開というものから孤絶してブツ切れの音を放つ入間川氏とは、ステージの左と右で、70〜80年代のECMのレコードで聴かれた演奏とECM New Seriesの現代音楽の演奏が併置されているような印象を持った。これは優劣とか新旧とか言っているのではなくあくまでも印象だけど。


まぁ、デュオのタイトルからして違和も齟齬もひっくるめて何が起きるか試してみよう、という意味だと思われるので、上手く行くとか成功する(そもそも即興演奏で、「上手く行く」「成功する」とは何だろう?そんなものは存在するのか?)ということを意図しているわけではないだろう。またあれば聴きに行くと思う。今度の共演者は誰だろう。