山内桂 vol.2@GRID605


1/13の門天の前に、1/12、吉祥寺GRID605での山内桂(id:salmosax)(ゲスト:大友良英id:otomojamjam))ライヴに行って来た。


山内 桂 vol.2 - GRID605
http://d.hatena.ne.jp/GRID605/20080112


山内氏はいつものアルトとソプラニーノ、対する大友氏は、ギブソンフルアコースティックギター「ES-125」に、E-bow2個、カポタスト、ペインティングナイフ、端にネジが切られたU字型の金具(建設現場の「足場」を組むのに使うものかな?)、親指ピアノ(カリンバとかムビラとか呼ばれるもの)2台、足元にエフェクト数台(エレクトロハーモニクスのリングモジュレータ、BOSSやMAXONの歪み系ペダル)など。


大友氏のギターは、「ギターマガジン」の今月号(2008年2月号)のインタビューに載っている。ヤフオクでジャンク品として落札したものに自分でPUをつけたらしい。


ライブの進行はこんな感じ。ちょっと記憶が曖昧なのと、俺の席からは大友氏の手元&足元はよく見えなかったので、事実誤認や勘違いがあるかも…。


前半:デュオ(アルト+テーブルギター)

  • 大友:ギターをテーブルに寝かせて、指板にE-bow 2台を乗せてドローン音。2台のE-bowで不協和な音を伸ばして、音のモアレ模様を作り出す。時折り弦を何かで引っ掛けて、シタール風の「ジョワ〜ン」というバズ音も。
  • 山内:息音中心、短いタンギングを繰り返すミニマルなパターン
  • 大友:E-bowは次第にサイン波風の澄んだ持続音に
  • 山内:中音の短いタンギングロングトーン→息音にフラジオを交えたロングトーン と変化
  • 大友:ギターにリングモジュレータをかけた、ゴングのような音
  • 山内:再び息音だけの演奏
  • 大友:ギターの弦に親指ピアノを乗せて爪弾く:ギターのPUが意外とちゃんと親指ピアノの音を拾うんだ。エレキピアノ(Fender Rhodes)を思わせる綺麗ないい音。親指ピアノを揺らすとヴィブラートが掛かるのが面白い。
  • 山内:低音のロングトーン
  • 大友:モーターのようなビヨヨヨヨヨという連続音。見えなかったのでよく分からなかったが、ペインティングナイフをギターの弦にはさんでプリペアして、ビョンビョンと弾いていたのかも…。
  • 山内:高音のタンギング:狩猟やバードウォッチングに使う「バードコール」を思わせるキシキシという音→再び息の音のみに

後半

  • 山内ソロ:ソプラニーノで自作曲(曲名違ってたらすみません山内さん)
    • 「!」(←こういうタイトル)
    • 「ホウリ」
  • デュオ
    • 大友:玩具の「フォルクスワーゲン型レコードプレーヤー(http://www.kanshin.com/keyword/990236)」をPUにかざして、安いテルミンみたいな電子音やブツブツいう接触不良系のノイズを。続いて、U字金具を弦に押し当てて引っかくことでガラスが割れるような強烈な「パキーン!」というノイズを繰り出す。
    • 山内:大友氏に煽られ(?)中低音のタンギングから高音の激しめなブロウに。その後もエヴァン・パーカーを思わせる高速トリル等、山内氏には珍しいアグレッシヴな演奏。
    • 大友:ギターをテーブルから持ち上げて抱えなおし、フィードバックによるロングトーンを鳴らしつつ金具でギターを掻き鳴らす。
    • 山内:息音とキー音によるトリル
    • 大友:リングモジュレータをかけて、ゴングや壊れたシンセのような音を。間を広くとった静かでサイケデリックな音響。弾きながら足の指でリングモジュレータのツマミを回して効果を変化させる。これは靴を脱いで上がるGRIDならではの光景では?(笑)
    • 山内:息音の合間に、かすれたようなフラジオを途切れ途切れに鳴らす
    • 大友:籠もったトーンで爪弾いて、E-bowで伸ばす
    • 山内:息音のロングトーンがデクレッシェンドして消えて行き、終演。
  • アンコール:短めのデュオ
    • 大友:親指ピアノ中心の静かな演奏:澄んだ音色がリリカルで美しい
    • キー音をカタカタ鳴らす演奏


後半は、山内氏には珍しく(音的に)動きの多い演奏!これが大音量のブロウだったらカン・テーファンみたいだった。大友氏もアグレッシブな、かつての「まな板ギター」(まな板にギターのネックやバネをネジ止めした、ノイズ発生器としてのジャンクギター。YouTubeでその勇姿(?)を拝むことが出来る。見たい人はググれ)を彷彿とさせるスタイルの演奏。


山内氏は普段は、ストイックに禁欲的といっていいくらいに、自分のスタイルを崩さず、ブレずに淡々と演奏を進めるタイプのアーティストだ。そんな山内氏がこのような激しい演奏を自分に許すのは、とても珍しいことだと思う。それはひとえに、共演者としての大友氏への信頼、というものがベースにあったからだろう。


ただ、お二人ともかなりの大音量で、音量的に制約の多いGRIDでは、どうなることかと(演奏中に苦情がきたりしないかと)多少ヒヤヒヤした(笑)。


この日会場に居合わせた皆さん(特に若いお客さん)、いいものを聴きましたね。なかなかあるもんじゃないよ。稀有な体験だったといえるのではないだろうか。


終演後、会場を片付けながら、GRIDのスピーカーと発振機を使って大友さんじきじきに「聴力検査」をしてもらう(笑)。俺は15KHzはなんとか聴こえたけど、16KHzは全くダメ。でも「年齢相応」だということは分かった。周りの若者達はやはりかなり上の周波数まで「聞こえる」と言っていた。山内さんはなんと18KHzくらいまで聴こえるらしい。ちょっと悔しい。