ジェントリフィケーションとアートの狭間で:麻布die pratze閉館について等


前々から運営が厳しいと言われていたニューヨークの先鋭的クラブ "Tonic" が、今週とうとう閉鎖してしまったのだが:


ダウンタウン・ジャズの拠点、クラブ「TONIC」閉鎖へ - Jazz Tokyo
http://www.jazztokyo.com/hotline/international.html

NYダウンタウン・ジャズやノイズ・ロック、ノン・ジャンル・ミュージックの拠点としてクリエイティヴなミュージシャンの拠点としてユニークな存在だったダウンタウン・マンハッタン、ノーフォーク・ストリートのクラブ「TONIC」が4月13日、ジョン・ゾーンの演奏を最後に9年間の営業を終え閉店することになった。クローズの理由は高騰する家賃。


tonic - 本家tonicのサイト
http://www.tonicnyc.com/


この件について横井一江さんのブログを読んで、いろいろと考えさせられた。


Tonic 続報 - 横井一江のブログ【音楽のながいしっぽ】
http://kazueyokoi.exblog.jp/5890476/

Tonicが閉店するに至った直接的な原因ともいえる「ジェントリフィケーション(Gentrification)」。東京でも下北沢の再開発計画といい、都市再開発に伴いジェントリフィケーションが進もうとしており、まったく無縁の話ではない。音楽家や芸術家にとって場は重要である。ジャズにしろ、タンゴにしろ、都市の音楽の揺籃の地はいかがわしくも猥雑な地であったし、過去に芸術家が集まった街は家賃が安く、まだ無名の芸術家でも創作が可能な場所だった。ジェントリフィケーションの功罪はいろいろであるが、音楽・芸術シーンには少なからず負に作用する。

ジェントリフィケーションとは→google:ジェントリフィケーション


NYでは、有名なパンク・クラブ、CBGBも。


SAVE CBGB - NY伝説のライブハウスを救え!『SAVE CBGB』日本公式サイト
http://blog.excite.co.jp/cbgb/

CBGB Online - 本家CBGBのサイト
http://www.cbgb.com/


俺がちょうど2年前の日記で書いたココも。


Pink Floyd "Animals" の発電所、再開発
http://d.hatena.ne.jp/Bushdog/20050403/p2
↑の日記ではリンク切れになってるので、下記を。
Battersea Power Station バターシー発電所 - 建築マップ
http://all-a.net/a_map/uk_london/battersea/battersea.html
BBC NEWS | In Depth | Battersea Power Station
http://news.bbc.co.uk/1/hi/in_depth/uk/2005/battersea_power_station/default.stm
"Glimpse of the future" というコーナーに再開発後の予想図あり。


んで、無縁どころではない、という話をしたいのである。東京で、真に前衛/先鋭的な演劇・ダンス・音楽の貴重な発表の場であり、舞踏・ダンスの熱心なファンに「ダンスがみたい!」の企画で知られる「ディプラッツ」の麻布の劇場が、今年で閉鎖されてしまうからだ。


die pratze
http://www.geocities.jp/azabubu/


麻布die pratzeの閉館について←必読
http://www.geocities.jp/azabubu/mainf.htm

民間の劇場は、自治体の劇場とは違って、家賃を支払い、人件費を捻出しなければならなりません。そのために私たちは切磋琢磨して遣り繰りしてきました。
劇場を借りる人たちにとっては、安くてきれいな劇場が出来るのはいいことでしょう。最近の公共の劇場は、以前の劇場と違って使い勝手もよくなっていることも事実です。ですが、その使い勝手が良くなってきたのも、民間の劇場が工夫してこれまでやってきたことがあっての話です。民間の劇場がなくなっていったら、様々なことを改善していくこともなくなってしまうでしょう。例えばそれは、以前には、夜9時までしか使えない公共劇場というのがたくさんあり、使い辛さは言うまでもありませんでした。そこに民営の劇場が作られて、夜10時は当たり前、夜11時くらいまで使える劇場も多くなってきて、次第に自治体の劇場の稼働率はどんどん低くなっていきました。それはどういうことだったのでしょうか。それは、公共の劇場は、劇場を運営する側にとっての都合を優先し、演劇にとっての質の問題を考えまいとしてきたからではないでしょうか。
そして最近作られた公共の劇場も夜10時まで使えるようになってきました。ですが、しつこいようですがそれは民間の劇場が工夫しながらやってきたから、そのようになったのであって、自治体が自ら積極的に行ってきた結果ではありません。
それと、使い勝手が良くなってきているとはいえ、今でも劇の内容を自治体や国が管理しているとは言えないでしょうか。劇場は、一般的な常識や価値観を覆してきた場所であったはずです。一般的な社会にとって危険なものを行為するかもしれないから、隔離して「そこの中だけは自由にしてもいい」という空間のことだったのではないでしょうか。公共の劇場は、今でも基本的な態度は変わりません。それは監視カメラで始終、使う側を監視していることからも分かるでしょう。私たちはそんなに監視されなければならないのでしょうか。お許しを得なければ、してはいけないのでしょうか。
このままでは劇場に、管理された安定したものしかなくなってしまうでしょう。

血の叫びだ...この悲痛な声に、耳を傾けろ。


更に今週、「アクション・インスタレーション」を標榜するパフォーマンス・イヴェント“Frantic Beauty”では、石原慎太郎によって豊洲への移転が計画されている築地市場での公演が開催される。


FRANTIC BEAUTY -action installation-
http://frantic.beauty.action.googlepages.com/
http://frantic.beauty.action.googlepages.com/about
Ttsukiji Action
http://frantic.beauty.action.googlepages.com/ttsukijiaction

今回、このパフォーマンスの場に築地を選びました。築地は5年後に豊洲への移転を控えていますが、「世界の魚市場」として食の安全、環境汚染*、移転による空洞化と都市の再開発及びその弊害、築地の扱う漁獲量と資源枯渇といった問題をも喚起する場所です。海の生命と人間の生命の食による関わりの中継地点である築地は自然と人間の象徴的な空間としての意味合いを強く持っています。
(*移転地、豊洲の土壌に基準値の1000倍を超える発ガン性物質が含まれているということが発覚)

早朝から活気にあふれて海の幸を分かち合う場、経済の場としての築地。近年は観光地としても親しまれています。移転後、その広大な魚市場はどうなるのでしょうか。