三太座談会@キッドアイラック


明大前キッドアイラックアートホールで開催された、フリーペーパー「三太」を巡る座談会を聴いてきたので、そのレポート。


三太座談会
http://www.japanimprov.com/tsugimoto/tsugimotoj/schedule.html


観客側から向かって右から左に:

ちなみに飽くまで座談会であり、演奏やCDかけたりというのは無かった。


おことわり

  • 以下の文責はすべて俺にある。事実誤認や間違いや不適切な表現があったらそれはすべて俺の責任です。
  • すべて記憶と当日走り書きしたメモに基づくもので、正確性の保証はできない。つうか、かなり心許ない。すみません。
  • 以下に箇条書きしたトピックの議題は俺が勝手につけたもので、当日実際にこういうタイトルが冠せられていたわけではない。

実は、前半エアコンが非常にキツくて寒かったのと、後半は後半で、エアコン切っていただいたのは有難かったのだが今度は酸欠気味になってしまって、後半になると頭がボーっとしてきて記憶が曖昧になっている。それから、休憩挟んで前後半・通して4時間というのは、さすがに長すぎ、こちらの集中力がもたなかった。


(以下敬称略)


大谷によるインタビュー:「三太」各号の概要と執筆内容について

  • 吉村
    • 「三太」発起のきっかけ:ライブ会場で「杉本論」のパンフレットを配布していた
    • 杉本の活動を「言説にすることによって自分でも確認したい」
    • 吉村に「フリーペーパーやれば」といったのは実は大谷だったと発覚
    • 演奏活動(マイクロフォンフィードバック)の概要とコンセプト
  • 杉本
    • 1号 素材 形式 構造について
    • 2号 曲 文脈について
    • 3号 音楽として何が有効・可能か(成り立つか)
  • 角田
    • 過去の活動の概要:空間を観察・記述する方法としてのフィールドレコーディング
    • 杉本・宇波の演奏の衝撃:インスタレーションを演奏でやる・演奏を彫刻のようにやる→「こういうやり方があるとは思わなかった。これは迂闊だった」


ディスカッション:「音響的即興」の問題点

  • 杉本:音響的即興=素材のオモシロさや入れ替えだけ、なのでは
  • 杉本:演奏の“フォーム”が面白くない・音色をはめ込むだけ・戦略が無い・その音色を選択しているのは結局単なる趣味(好き嫌いでは)では


ディスカッション:杉本「ソリッド/アトラクティヴ論」をめぐって

  • 大友:ソリッド/アトラクティヴ論が良く分からない
  • 角田:(ソリッド/アトラクティヴ)は、美術では:市場に乗りやすく流通しやすい(社会的なメッセージ性の強いもの・または逆に分かりやすいグロ)→アトラクティヴ。思考的・実験的・すぐ分からない→ソリッド 
  • しばらく大友 vs 杉本のベイリー論:
    • 杉本:70年代のベイリーの衝撃はいまや分からない
    • 大友:ベイリーは“アトラクティヴ”になってからのほうが面白い・リアル
    • 杉本:ソリッドなほうが表現として難しい・芸術家なら困難な道を行くべき
    • 大友:結局、自分は“バンドマン”的なリアリティが好きなんだと思う

(休憩)


質疑応答

  • 佐々木敦 with 大友:「音響」なるタームの功罪について
  • 佐々木:杉本は過去の活動を否定していくことで前進していくタイプ、大友は過去の活動をストックして次につなげていくタイプだと思う
  • 吉村・角田:このフリーペーパーをWeb上で展開するつもりはない:文章は紙で読むのが好きだし、読みたいなら、ちょっとは入手するのに労力割くというかアクションを起こしてほしいから。
  • etc

こんな感じだったかな。


トピックの流れはそんなにキッチリと区切られていたわけではなく、割とグダグダ気味(失礼!)にゆるく推移したり、また戻ったり、という感じだった。


後半の質疑応答では、客席に来ていた佐々木敦氏が積極的に発言して、大谷氏・大友氏との鼎談みたいになった。そのため話題がどうしても佐々木氏の著書「テクノイズ/マテリアリズム」で展開されていたような「音響とは何だったのか」という話題に傾きがちになってしまったのは、ちょっと今回の座談会の趣旨からは脱線ではないかと思った。


ただし、佐々木氏の「杉本さんは結局ピュアな実験主義的な傾向が強くて、それに比べて大友さんは飽くまでバンドマン的な立ち位置にいる」という認識は、的を射ていると思った。


全体の内容は、興味深い発言や、各自の活動を読み解くヒントとなる見解が散見されたものの、一つのトピックが何か結論的なものに結実することは少なく、また、討論っぽくなっても対立項を擦り合わせて止揚するには至らず、いささか尻切れトンボ気味という印象がある。話題はどれも面白かったので、そこがやや残念。


「じゃあオメーが積極的に発言すればよかったじゃねぇか」


ごもっとも〜。だって俺、ここら辺、まだ自分の中でも整理がついていないのと、当日のトピックを追って記憶にとどめるので精一杯だったからなぁ。ダメじゃん俺。


ただ、こういう議論や問いかけというものは、誰かから答えを待ってんのが一番ダメな姿勢だろう。自分で色々考えずに「コレが答えだ!」「ズバリ言うわよ」と誰かに言ってほしいみたいな。それにそもそも正解が出る問題でもないしな。だから、結論的なモノが出なかったからといって、マイナス評価とか上手くいかなかったとかとは、俺はまったく思わん。


これを契機に各自でイロイロと考えてみる、そこからすべてが始まるのではないだろうか。