Touch the Sound - そこにある音


告知】4/21(金)23時〜NHK総合TV「英語でしゃべらナイト」で、エヴリン・グレニーのインタヴューが放映される模様。
http://www.nhk.or.jp/night/nextpgm.htm
(この番組って英語の勉強用で、字幕や吹き替え出ないんじゃなかったっけ...)


Touch the Sound | タッチ・ザ・サウンド 公式サイト
http://www.touchthesound.jp/

パーカッショニストエヴリン・グレニーは、ギタリストのフレッド・フリスと共に、新しいCDの録音でドイツのケルンにある廃墟となった大きな工場跡にやってくる。二人にとって、周りにある様々な機械や手すりも楽器、そこから新たな音を紡ぎ出していく。 聴覚障害のあるエヴリンは、非常に音が聞こえにくい。しかし、彼女は、体のあらゆる感覚を通して音を感じている。

順次中京・関西方面でも公開中・公開予定。
http://www.touchthesound.jp/theater/index.html

東京では渋谷ユーロスペース
http://www.eurospace.co.jp/es_detail.cgi?no=8

または吉祥寺バウスシアター
http://www.baustheater.com/


メインのロケ地になっている煉瓦造りの廃工場が素敵すぎる。ピンク・フロイド「アニマルズ」のジャケになったバタシー発電所を思わせる。


脱線:バタシー発電所だが、再開発されてこんなん↓なってしまうらしい....。
俺の過去日記。
http://d.hatena.ne.jp/Bushdog/20050403#p2
The Powerstation - Battersea Power Stationのサイト。
http://www.thepowerstation.co.uk/
ちょっと幻滅...つったら地元の人に悪いかな。


俺にとってこの映画で最も衝撃なのは、フレッド・フリスの激太りだ(爆)。フリス先生、その太り方ちょっとヤヴァすぎでしょう。エヴリンにパーカッション代わりに背中叩かれて「いい音がするわね」とか言われて喜んでる場合じゃねぇだろ、と小一時間 (ry


フリス先生の激太りは置いといて、この映画、"Step Across the Border" へのオマージュでもあるのね。映画の構成がほぼ同じなのと、あちこちに "Step..." からの引用が散りばめられている。どこがどうかはネタバレになるから明かさないけど。なのでこの映画観る人は、後でも先でもいいので "Step..." のヴィデオかDVDも観ましょう(笑)*1


あちこちのレヴューやブログで書かれているとおり、エヴリン・グレニー演奏家としての能力は全く聴覚障害というハンデを感じさせないものだ*2。つうかはっきり言って凄い。打楽器のヴィルトゥオーゾと呼ぶにふさわしい。


サントラのアルバム*3から例にとってみよう。

Touch the Sound [Soundtrack] - 試聴可
http://www.amazon.de/exec/obidos/ASIN/B0006O9MCM/qid%3D1127994887/sr%3D8-1/ref%3Dpd%5Fka%5F1/028-5498632-1217323


例えば:


サイトのこの↓ページに写真が載ってる、マリンバ独奏のシーン。
サウンドトラックでは "23.The Way")
http://www.touchthesound.jp/comment/index.html
映画で観ると、まるで打ち込みのシーケンスのように均一に続くマレットの連打。だがほんのわずかな指先のコントロールで、この連打の中からメロディラインが焙り出しのように浮き上がってくるのである。


または、鬼太鼓座との共演場面(この↓ページ下端の写真が収録中の様子らしい)。
サウンドトラックでは "11.Taiko")
http://www.threeweb.ad.jp/~sinaba/ondekoza2/jp/heartbeat.shtml
エヴリンが見よう見まねでやってるうちに、パーカッションの叩き方がだんだん皮の反動を利用して撥の返しを大きく取る“和太鼓の叩き方”になっていくんである。もちろん、王立音楽院で学んだ経歴の持ち主だから、和太鼓の訓練くらい事前に受けていた可能性はありえる。だが、和気藹々としたセッションの中、肩の力の抜けた様子で太鼓奏者と合わせていく様子は、無意識にそうなっていったと解釈するほうが自然だ。


こういう超絶的な能力は、正規の教育を受けたゆえの、柔軟性と高度なコントロール能力の賜物だろう。


あと、日本語版のパンフやWebサイトに掲載されていないのだが、音響効果・サウンドデザイナーの人たちの仕事が素晴らしい。

Touch the Sound official Websiteから "crew" をクリック。
http://www.touch-the-sound.com/

  • Marc von Stuerler (location sound)
  • Gregor Kuschel (location sound)
  • Christoph von Schoenburg (sound edit)
  • Hubertus Rath (re-recording mix)


多分、同録ではなくアフレコでかなりきめ細かく被せてあると思うが、ミュージック・コンクレートやリュック・フェラーリの作品のように精緻で繊細だ。音と映像が、まるでつづれ織りのタペストリーやカラフルな端布れを縫い合わせたパッチワークキルトのように配置されている。


DVD出たら買って、止めたり進めたり戻したりして、細かいディテールを確認してみたいと思う。


Touch the Sound [DVD] [Import]

Touch the Sound [DVD] [Import]


ところでエヴリン・グレニーって、ケイト・ブッシュに似てない?

*1:そういえばフリスが使ってるギターも、ES-345とメーカー不明の白いベースは "Step..." でも使われてたのと同じものと思われる。

*2:2〜3年前のニュース23だかニュースステーションだかの報道は典型的な“障碍に負けない立派な人”という取り上げ方で凄く嫌だった

*3:どうもドイツ盤しか出ていないようだ