レヴュー:2/6 今井和雄&灰野敬二デュオ@Plan-B


いつのだよ、遅すぎだろう、とかツッコミが入りそうだが(大汗)、実は意外にもこの日がお二人の初共演だったそうなので、記録を残しておいたほうがいいと思って。それに内容、非常によかったし。

スケジュール表では両者ギターと記されていたが、結局、灰野氏の使用楽器は最近のパーカッション・ソロで使われる楽器やオブジェのセット(以前の俺の日記も参照 http://d.hatena.ne.jp/Bushdog/20050914#p1)。あと謎の民族楽器。中近東やシルクロードの撥弦系弦楽器みたいな音がしていたが、灰野氏が暗闇でうずくまって演奏していたので何だったのか不明。


ライブは、今井氏がギターの6弦の音を非常に低くデロデロになるまで下げてスタート。照明をかなり落として、暗がりの中での演奏。



今井:

  • 楽器を持たずに、ギターを拭くための“セーム革”のクロスを振ったりクシャクシャ丸めて小さな音をたてる。続いてギター・ケースの上にギター横たえ、セーム革でギターの胴を叩く→そのまま革をギターにかぶせて弦をミュート、横たえたまま上からかきむしるように弾く

灰野:

  • こちらも楽器持たずに、今井氏の音に応じて手を叩く

灰野:

  • 跪いて、床にドラムスティックくらいの金属棒を転がして音をたてる
  • タンバリン(でいいのかな?あの手の民族楽器かも)を叩き・振り回し。床に叩きつけ、引き摺って激しいノイズを出す:ただ、いささか長くてちょっと飽きた。

今井:

  • ギターを抱え上げ、ボディを抱きかかえるようにして支えてあちこち太鼓のように叩き、こする。ゴムボールかスーパーボールみたいな球でこするのもやっていたみたい(よく見えなかったが)。

灰野:

  • 謎のアルミの円盤状のパーカッション(ネットでも検索したが名称・正体不明)。シンバルのように曲面になっておらず平らな円盤で。周縁部に4箇所、円弧状のスリットが入っている。これをマレットで叩いてから振り回して音を揺らす。「ユイイイイン」というような余韻。
  • ウォーターフォン(ただし水なし)を片手で持って、スポーク部を叩き・こする(http://images.google.co.jp/images?q=waterphone&svnum=10&hl=ja&lr=&sa=N&imgsz=)。深いリヴァーブが掛かった音がサイケデリックでこよなく美しい!
  • シンバルを叩く。これはエフェクト・シンバルというのか?シズル音が大きくて割れたような「ジャイイン」という変わった音。競輪の“ジャン”という銅鑼や客船の出航の鐘を思わせる。これをバリのガムランで使うハンマーで叩く。かなりけたたましい、耳につく音。
  • フレームドラムを床に置き、その上に大小のリンを乗せて鳴らす。フレームドラムが共鳴箱になって大きく響く。

今井:

  • ヴィオラ・ダ・ガンバに持ち替える。アルコ(弓奏)だがノイズ的な音:昔のラジオのチューニング音のようなポルタメント(ちょっとテルミンっぽい)→動物の鳴き声や人の声のような音(ハンス・ライヒェルのダクソフォンを思わせる)→ピチカート:なんか中東の民族楽器っぽいビョンビョンいう音で

灰野:

  • ステージの奥、暗がりの中に後じさってうずくまる。
  • 民族楽器系の弦楽器をストロークで掻き鳴らしながら歌うというか叫ぶ。楽器はサズとかあの手のシルクロード近辺の楽器っぽい音。何しろ暗闇の中なので何も見えない。
  • 闇の中からまるで悪魔に憑かれた老婆のようなシャウトが聴こえる。ハイトーンではなく、即興の詩を歌うのでもなく、獣じみた、怒気を孕んだ低い声の叫び。


今井:

  • ギターをプリペアして、機械音というかインダストリアルな雰囲気な音にし、それで延々とアルペジオを。リング・モジュレータをかけたような音でもある。

灰野:

  • 韓国のサムルノリで使うようなシンバルや小さいフィンガーシンバルを10個ほど、床に置いて叩きつけたり引きずり回したりして金属音をたてる。

今井:

  • “普通”にギター演奏。はらはらと、取りとめのない、不協和音の多い演奏だが、美しい。どこか、武満徹のギター曲(「海へ」とか)を思わせるようなエチュード


最後は、お互いに互いの音の間を計りあうように沈黙して、終演。


久々に、禍々しく鬼気迫る、“怖い”灰野さんを観る(暗くてよく見えなかったけどさ)・聴くことができてよかった。今回の競演は灰野さんからのオファーだったらしく、かなり気合入ってた印象だった。


あと、灰野氏はアコースティックにせよ、エレクトリックにせよ、デジタル機材にせよ、深いリヴァーブの中にいるのが似合うなぁ、と思った。この日は、ウォーターフォンの演奏が出色だった。