後向きに疾駆せよ!(2)わびさびノイズの楽しみ


80年代からノイズ・ミュージックにハマっていたのだが、当時のノイズの人って(今も一部はそうだけど)「社会的にもノイズ的・反社会的な存在でいてやる!」という志(?)が強くて、ビジュアル・イメージも、死体とか内臓とか畸形とかがジャケットに載ってるようなのが多かった。


俺はヘタレなもんで(笑)そういうレコードジャケットとかが苦手で、その手のビジュアルのグループにはどうにも手が伸びなかった*1。だから、Nurse with Wound とか Nocturnal Emissions とか SPK とかの代表作といわれる作品を実は聴いてない。


その代わり、ノイズ・ミュージックでも、鉱物、植物、廃墟とかがビジュアル・イメージになっているグループは、レコード・ジャケット、サウンドともに俺の好みだった。前者がSM雑誌や死体写真を脅迫状まがいにコラージュしたようなジャケットが多かったのに対して、後者は、抽象的なドローイングや銅版画やリトグラフとかが多かったのも好みに合っていた。


俺はそんなノイズ・ミュージックのアーティストを、勝手に“わびさびノイズ”と命名していた。というわけで、今回は“わびさびノイズ”のアルバムから。(それにしても、酔っ払って携帯で撮ったから、ひでぇ写真ばかりだなぁ。 orz)

DOME (Bruce Gilbert, Graham Lewis): DOME 3


Wireがいったん解散してから、バンド内の前衛志向組が結成したプロジェクト。凄く好きで、80年代は全作品揃えたと思う。ラッセル・ミルズの静謐なジャケットがまた良かった。サウンドの内容にぴったりだった。

Five or Six: A thriving and happy land


ラッセル・ミルズ繋がりで。こちらはノイズ・バンドではなく、どっちかっつうと“ポスト This Heat”みたいな扱いのバンドだったと記憶する。タイトなベースと硬質なパーカッションに淡々としたヴォーカル、みたいな。ミルズによるジャケットがほんと美しい。

Pink Industry: Who Told You, You are Naked?


こっちもそんなにノイズ寄りではないけど、Fool's Mate誌(ビジュアル系ロック雑誌になる前の)のレビューで「歌うDome」と書かれてたので購入。確かにDomeのサウンドにリヴァーヴを多めにかけて淡々とした女性ヴォイスが乗っかるという感じで、気に入って良く聴いていた。

SEMA (Robert Haigh) : Theme from Hunger


非常に寡作な、Robert Haighによる卓録プロジェクト“SEMA”のLP。当時かなり気に入って聴きこんだ。非常に静かで音量も小さいが、その静寂が逆に不安を掻き立てられるような音楽。まるで、どこか遠くでクーデターが起きて通信と交通が遮断された郊外の街を覆う沈黙のような。ラジオをつけても放送局が占拠されててサラサラとしたノイズしか聴こえてこない、そんな静かだが不穏な空気をそのままアルバムに納めたような作品。後に“微音系・弱音系”と形容されるようなノイズ・ミュージックの原点の一つ。

Cranioclast: A Con Cristal



こちらも非常に寡作な、ドイツだったかな?のノイズ・ユニット。海岸で朽ち果てていく第二次大戦時の塹壕やトーチカ(確かノルマンディーだったと思う)を撮ったブックレットが付いてきた。音はそのブックレットどおりの、朽ち果て、錆び、崩れていく廃墟のためのサウンドトラック。非常に良い。

Zoviet France: A Flock Of Rotations

名前に関わらずソヴィエトともフランスとも関係ないはず。非常に長いキャリアを誇り、いまだに良質な作品を出し続けている、真にリスペクトすべきグループ。

オフィシャルのWebサイトはこちら。
http://pretentious.net/zoviet/

これは、ペナペナのトレーシングペーパーみたいなジャケット(スリーブ?)にコラージュが印刷してある。

中ジャケはこんな感じ。


あと、トタン板みたいな金属板に麻紐を十字にかけてレコードを挟んでジャケットにしてある10"も持ってたんだけど、消息不明。もしかしたら、ゴミと間違われて親に捨てられたかも(泣)。

*1:俺、ジョン・ゾーンを聴いたのもだいぶ遅かったんだけど、それも同じ理由。