沈黙と微音と変な弓。

明大前キッド・アイラック・アート・ホール

(ステージ向かって左からの配置順)

宇波氏は少し前に入手(ブログによると)したというコントラギターを使用。リュートでいうテオルボやアーキリュートみたいな楽器でクラシックギター風のボディ(弦は金属弦)の六弦側にもう一本長いネックが生えていてドローン弦が数本張ってある。

チェロのヴェリオティス氏は半円形の弓に毛をタルンタルンに緩めて張ったものを用意。てっきり古楽器か民族楽器の弓を援用しているのかと思ってたのだが、帰宅後ググってみたらこういうのだというのが判明。「バッハ・ボウゲン」と読むのか?バリバリ現代音楽用じゃん。サイトをみるとラッヘンマンとかが曲書いてるし。

杉本氏はいつものギルドではなく、マイクなしのピックギター。チャキ(茶木)か?

  1. 杉本氏の曲
  2. ヴェリオティス氏の曲
  3. 即興セッション

1. ストップウォッチを一斉に押してスタート。手元の紙に何分後に何を弾くように指示が書いてあるようだ。が、内容はいつもの“沈黙(とその間の音)を聴かせる音楽”。全体を通して楽器の音は10音くらいしか出なかったのではなかったか。その間聞こえていたのは外を通る学生(明大前だから)の声、甲州街道の車の音、路地を行き交うバイクの音、時折り観客の身動きの音。申し訳ないが寝ました、ちょっと。(^_^;;

2. 木下+ヴェリオティスと、宇波+杉本、つまり擦弦(チェロ+ヴァイオリン)組と撥弦(ギター)組に分かれ、交互に演奏。ギター組はポーン、ポーンと、2回くらいしか音出さなかった。チェロ+ヴァイオリン組は、ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと、ひたすら長く(十数分?)音を伸ばし続ける演奏。モートン・フェルドマンの曲みたいな。
例の特殊な弓は、毛が緩く張られているのでチェロの弦4本全てを覆うようにしてカバーすることができる。ヴェリオティス氏はこの特色を生かしてギターみたいに左手でフォームを押さえてコードを弾いていた。ちょうどメロトロンのストリングスみたいな音。だけど毛の張りがすごく緩いので通常の運弓はやりづらそう。それに弦を擦ってる様子が乾布摩擦や垢すりみたいで、ちょっと面白かった(笑)。

3. インプロでのセッションは、木下氏がヴァイオリンを膝に置いて「ギリ...ギギ...ギチギチ...」というノイジーな音を出しているのに乗るような形で展開。宇波氏はコントラギターでスライドギターを弾いたり。面白かったのは杉本氏で、なんとギターの金属製テールピースに、なんとなんとE-Bowをあてて、虫の音のような儚げでかそけき音を出していた。つうか、あんな所にE-Bowをあてて音が出るとは驚き。テールピースが鳴っているのか、テールピースが振動して弦のハーモニクスが鳴っているのかは不明。

全体を通しては、3つめの即興セッションが面白かったかな。できれば宇波氏のコントラギターの構造をもっと活かした演奏を聴きたかった(チャップマン・スティックみたいにタッピング楽器としてしまうのはどうだろう)とのと、ヴェリオティス氏のあの変な弓を効かせた演奏をもっと聴きたかったかな。