E#氏の新境地 "The Velocity of Hue" の全貌

DLX コンサート シリーズ XLIV
http://www.super-deluxe.com/schedule/schedule.php?lang=JP

  • エリオット・シャープ(G, SS, PowerBook
  • 八木美知代(17弦・20弦琴)

出遅れてしまって、開演10分後に入場。ちょうどE#氏のソロの真っ最中。
展開はこんな感じ。

  1. E-Bowによるソロ:E-Bowは、ロングトーンを得るためというのもあったが、弦がフレットに触れるいわゆる“サワリ”音を強調するためにも使っているようだった。
  2. タッピング→高音域に動いていって、そのままボディ叩きに移る
  3. 叩き音をPowerBookに取り込んでループ・変調
  4. ループ音をバックにE-Bowでソロ。それにしても、エレアコギターで、ちゃんとE-Bowって“効く”んだなぁ。
  • 長い金属棒を指板にはさんでプリペアドギターとし、はじいて「ばぃぃぃぃ〜〜ん」という音
  • 今度はバネ二本をくっつけてはじく
  • プリペアドギターの音を PowerBookでループさせ、さらに色々と変調して、ノイジーなインダストリアルぽい音に加工。しばらくループ続く
  • 続いてわりと普通に(笑)ギターを掻き鳴らしつつ、時折りピック・ビハインド・ブリッジ奏法で、倍音を強調させた音を奏でる
  • タッピングソロ再び(これが全体のテーマとなるモチーフらしい)
  • 終わり。

確かに僕の聴いた限りでは、過去のE#氏には無かった音楽性の演奏だった。先日の日記に書いたようなユージン・チャドボーンとの共通性は感じられなかった。聴いた印象では、なんか、チャールズ・アイヴズみたいな感じ。ちょうど、メランコリックでなつかしい感じのモチーフと、トーン・クラスター状のアブストラクトな音塊が交互に現れてサンドイッチになっている所が似ているかな、と思った。アイヴズがギターソロ曲を書いていたら、こんなのになったかもしれない。

休憩挟んで八木美知代とのデュオ。

八木氏はスタンドに20弦と17弦の琴をセット、20弦のほうは立って、17弦のほうは椅子に座って演奏するようになっている。

演奏は計4セット:

  1. 20弦立奏
  2. 17弦座奏
  3. 20弦立奏
  4. 17弦座奏

八木氏はこの日、右手で細かく素早いトリルを持続させつつ、左手で琴の“持”を動かしたり、スティックでスライドバーのような事をしたりしていた。動から静に移っても緊張感が途切れないのが素晴らしい。

E#氏はずっと“従”の側にいたような印象。スライドバーやE-Bowやらいろいろとっかえひっかえ試してみるが八木氏のどんどん進んで行く演奏に追いついていかない。ようやく拮抗するようになってきたのは3セット目からか。それでも全体を通して八木氏の好調さが一枚上だったと思う。音色の魅力やヴォキャブラリの豊かさに加えて演奏における“速さ”や迷いの無さが卓越していた。この日の八木氏の演奏は凄くレヴェル高かったと思う。