コトバはどこから生まれるのか


これは凄い。中米ニカラグアで、政情不安等の事情で聾唖者教育の施策が破綻してしまった聾唖学校で、子供たちの間から自然発生的に全く新しい“手話”が誕生したというお話。


The Birth of a Language - Radium Software Development(高橋啓治郎氏のブログ)
http://www.radiumsoftware.com/

そのような状況にあって子供達は,いつしか簡単なジェスチャーを使って互いに意思疎通を図るようになっていた。大人達は相変わらず戸惑うばかりだが,まだ言語能力の固まっていない柔軟な頭脳を持つ子供達にとって,独自の「言語」を持つことはむしろ自然な流れだったのかもしれない。それは次第に語彙を増していき,本格的な文法を備え,ついには複雑な意思疎通をも行えるほど成熟した「言語」へと発展を遂げるに至った。後にこの「言語」にはニカラグア手話 (Nicaraguan Sign Language), またの名を Idioma de Signos Nicaragense 略して I.S.N. という名称を与えられることになる。


Birth of a Language - PBS Documentary
http://www.pbs.org/wgbh/evolution/library/07/2/l_072_04.html

The language was complete with syntax and grammar, without any sound or speaking input. Moreover, it appeared to actually evolve as the younger set expanded and refined basic gestures the older students had mastered.

その言語は、何らの音声や発話によるインプットも伴わずに、シンタックスと文法を完備していた。そのうえその言語は、年かさの生徒達が習得した基本的なジェスチャーを拡張・洗練させた、より若いセットとして実際に進化しているように思われた。


うーむ凄い。状況が状況だけに、安易に奇跡だのなんだのという形容をしてはいけない気がするが....なにしろ教育行政の破綻が原因なわけだから。


それでも、コミュニティがあってコミュニケートする必要に迫られたとき、人間は言語を生み出さずにいられないというのは、極めて感動的だ。不謹慎なこと言っちゃうと、ファースト・コンタクト・テーマのSF小説みたいだ。


PBS Documentaryのサイトにはドキュメンタリー番組の動画も用意されている。優雅な舞踊のような手話の動きが美しい。それは希望のダンスのようにも思われる。