11/1 ヨネモトルーム:ヴァンデルヴァイザー楽派特集

というわけで、米本氏主催によるイヴェントに行ってきた。


ヴァンデルヴァイザー楽派について良く知らない人はまずググってみよう:google:ヴァンデルヴァイザー


ヴァンデルヴァイザー楽派 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%BC%E6%A5%BD%E6%B4%BE

この楽派の特徴は、最も音楽に使う素材を限定する特性によって知られる。30分の間に鳴る音が5回ほどということも珍しくない。作曲者自らが演奏に積極的に加わるのも大きな特徴であり、ラドゥ・マルファッティは元プロのジャズトロンボーニスト、ユルク・フレイはプロのクラリネッティストである。音を聴くこととはなにか、をここまで微視的に眺める楽派は例がなく、1990年代の大きな潮流とみなされた。ボイガーのアコーディオンソロの為の『砂の物語』、シュロットハウアーのクラリネットソロの為の『息から』は典型的なヴァンデルヴァイザー楽派の初期の成功作とみなされる。この楽派によって20世紀の音楽史の扉は閉められたといってよい。

(野田 憲太郎氏による解説)


Edition Wandelweiser GmbH - 公式サイト
http://www.wandelweiser.de/

Webラジオの放送もあるのだが「Webラジオなのに全く音がしない」(宇波氏)とかそういうのらしい(笑)


プレイリスト(野々村氏の承認得て転載・敬称略)

  • 野々村:
    • EWR 9601/2 Antoine Beuger: die geschichte des sandkorns
    • EWR 9604 Christian Wolff: Stone
    • EWR 0502 Burkhard Schlothauer: 55 similar sounds plus two drummers drumming
    • TSCR 9811 Schlothauer's Maniacs: Think Low, Summertime (廃盤)
    • x-tract 2006 bernhard gunter: insects [zeitkratzer: electroniX]
    • EWR 0410 Jurg Frey: Streichquaratett II
  • 杉本:
    • EWR 9801 Radu Malfatti: die temperatur der bedeutung
    • EWR 0107 Antoine Beuger: calme etendue (spinoza)
    • Random Acoustics 015 G. Schneider, R. Malfatti, B. Stangl: Trio nr.1 [Burkhard Stangl: Loose Music] (廃盤)
    • slub music 09 Radu Malfatti: Tokyo Sextet (electronic version)
  • 宇波:
    • EWR 0407/08 Eva-Maria Houben: dazwischen
    • EWR 0501 Burkhard Schlothauer: abregistrieren
    • hibari 09 Antoine Beuger: three drops of rain/east wind/ocean [Rhodri Davies / 石川高:ハープと笙のための作品集]
  • 角田:
    • EWR 0601 Manfred Werder: ein(e) ausfuhrende(r) seiten 218 - 226
    • EWR 0402 Antoine Beuger: silent harmonies in discrete continuity
    • EWR 0406 John Cage: Cartridge Music
    • skiti 01 Manfred Werder: 2006-1
  • 米本:
    • EWR 0106 Michael Pisaro: Mind is Moving I

上記の音源(石をカチカチ叩いてるだけ、とか、電子音でできた鈴虫みたいのとか、サイン波が幾重にも重なってるのとか、楽器の音よりも周囲の環境音が多いライブ音源とか、の抜粋。実際はそういうのだけが1時間ずっと続く、というCDばっかり)をかけつつ、以下のような話題で進行。

  1. 野々村:ヴァンデルヴァイザー楽派略史
    1. 位置づけとしては、ケージ等の“アメリカ実験主義”の終着点である。
    2. ヨーロッパなのに?→アメリカ実験主義の評価や需要はアメリカ本国では評価や需要は“空洞化”した。晩年のケージやジェームズ・テニーの作品の委嘱元は殆どヨーロッパであった。そういう流れや意味合いからも、ヴァンデルヴァイザー楽派はアメリカ実験主義の系譜にあるとみるのは妥当だ。
    3. 出版社・レーベルの概略と歴史
    4. すでに1990年代初頭に、2000年代に代々木オフサイトで行われたような“音楽”が実践されていたのは、相当早い。
    5. サブレーベルzeitkratzer (timescraper) で一時期手を広げすぎて収集つかなくなっていく過程↓
    6. Burkhard Schlothauerがやってる、とてつもなくダサいジャズ/フュージョン・バンド(80年代のマイルス・デイヴィスのパチもんみたいな)のディスク等:他には、メルツバウマニュエル・ゲッチングルー・リード「メタル・マシン・ミュージック」をライヴで再現、とかいう訳の分からないアルバムもあるらしい。
    7. その後、リリースを整理・絶版・新規まき直しを図って現在に至る etc
  2. 宇波・杉本とヴァンデルヴァイザーとのなれそめ
    1. 杉本:ボイガーのコンサートでの“衝撃”
    2. ラドゥ・マルファッティとのツアー etc
  3. 杉本のヴァンデルヴァイザー観「良くデザインされている」「時間をデザインする音楽」
  4. (ここらへんの会話は、実際に杉本宇波所有の“楽譜”を回覧しつつ行われた)
  5. 角田のヴァンデルヴァイザー観「ギャラリーや美術館でインスタレーションコンセプチュアル・アートを展示するのと比べると、やりかたが実にスマート」
  6. etc
  7. 質疑応答(というか雑談)

杉本氏の受けた“衝撃”については、杉本氏がフリー・ペーパー『三太』1号で書いている。

もう5年くらい前になるが、私はアントワン・ボイガーという作曲家のコンサートに行ったことがある。観客は関係者(私を含む)以外誰もいなかった。内容は、5時間(それでも抜粋である)の上演中、約半分は無音で、音のあるところも、ボイガー本人がスピノザの『エチカ』をテクストにして8秒に一回一語ずつ読み上げるだけという、実にハードなものであった。

....(笑)。


この日、開場から30分ぐらいの間、実はManfred Werderのニュー・アルバムがBGMとして流れていたのだが、CDがかかってるとは全然分からない(笑)。数分に一回、お客さんが「あっ、今、音が鳴った」「鳴りましたね」とか言い合ってるのが笑えた。


あと、最後の質疑応答で「こういうのを聴くのは面白いんですか」「いやぁ、面白くはないでしょうねぇ(笑)面白い面白くないというよりは何か考えさせられるというか」(杉本)などという会話があったりして興味深かったのだが、俺がヴァンデルヴァイザー楽派について思うことは、また項を改める。


ちなみにディスク・ユニオンでは先月、ヴァンデルヴァイザー大量入荷という無謀な賭けにでている。興味(?)のあるかたは聴いてみると、勇者として称えられるかもしれない。誰から称えられるのかは分からないが。



2006.10.03 【再入荷!!】 静寂のレーベル エディション・ヴァンデルヴァイザー大量入荷
http://diskunion.net/rock/news.php?news_id=8&page=3&pset=1&yyyymm=2006-10

ドイツを拠点とする エディション・ヴァンデルヴァイザー は、ブルックハルト・シュロットハウアーやラドゥ・マルファッティ、ユルク・フレイ、アントワーヌ・ボイガーなどが集い活動するヴァンデルヴァイザー楽派を中心とするレーベルです。時に極端とも思える静寂と、音数を絞った演奏で、ワビやサビにも通じる美しさを提示しています。さらに最小限に発せられる「音」は、「音」そのものと「空間」への意識を拡大させ、聴衆者に「聞く」という行為を問いかけます。その方法は大友良英や杉本拓、宇波拓などの次世代の音楽家にも大きな影響を与えています。ヴァンデルヴァイザー楽団の曲の他に取り上げているJOHN CAGEやLUIGI NONO、CHRISTIAN WOLFFの曲との相性もスバラシイ。