凄すぎる東欧ロックの世界


いやぁ想像以上にトンデモだったっす「ヨネモトルーム;東欧軽音楽の夕べ」。


ルーマニアグルジアトルクメニスタンリトアニアチェコポーランドブルガリアetcの、ペレストロイカ以前のロック&ポップスバンドのDJ大会!腹を抱えて大爆笑。


音楽性のおおまかな傾向としては、下記の3種:

  • 民謡や民族音楽の無理やりなエレキ化
  • ヘッポコなカルトGS
  • 物凄く勘違いしたプログレの解釈


以下に、多くのバンドの印象に残った共通項とか傾向を列挙してみる。


ヴォーカルは合唱が基本
コサック合唱団とかロシア民謡とか共産党唱歌の伝統を踏まえてか?ヴォーカルはなぜか合唱(コーラスというよりこの呼び方がふさわしい)がメインのバンドが多い。


爆音ギターが皆無
ジミヘンとかハード・ロックは、退廃的という理由でご法度だったらしい。だから歪んだエレキギターがほとんど聴けない。トレモロとかフェイザーとかリヴァーブがジョワジョワ入ってるのは多い。だからエレキ・ギターのサウンドは、いわゆる“エレキ・インスト”やGSの音のまま進化が止まっている。


でも、ファズ・ペダルの名機「ファズ・フェイス」って、後にロシアで生産されるんだよねぇ。これが不思議だ。国内には流通しなかった?


プログレっぽさ」の意味を根本的に履き違えている
プログレッシヴ・ロックといえば、クラシックをベースにさまざまなジャンルの音楽を組み合わせた複雑な構成を持った組曲形式のロック、というのが一般的な定義だろう。東欧にもご多聞にもれずプログレっぽい音楽をやるバンドは多いのだが、当地のバンドはどいつもこいつも、プログレという音楽を根本的に勘違いしているのである。その音楽は、とにかくアレンジが全く脈絡なく切り替わる。例えば:


「冒頭いきなり雄雄しきコサック合唱→ジェネシスのパチモンみたいなイントロ→Aメロ始まると何故かいきなりヘッポコGSに」


というような展開になってたりする。曲が進行するにつれてショボくなっていってどうする(笑)。そのアレンジを採用した意図が全く不明である。


なんか、絵画に例えると、引き出しに入っていた画材を、手に触れた順に「油→木炭→サインペン」というふうに使ったらミクストメディア作品になっちゃった、みたいな感じである。そこには全く構成やコンセプトは無く、単なるあてずっぽうである。


ドラムはとにかくダメダメ

  • どうも「ロックのドラムはフィル・イン(オカズ)を入れるもの」という先入観があるらしく、どのバンドも、やたらとフィル・インを入れる。
  • だが、どうもフィル・インというと「タム回し」つまり数個のタムタムを音の高いほうから低いほうへ「タカタカドコドコ」と鳴らす技法しか知らないというか、ドラマーの間で浸透していないらしい。
  • そのフィルインがもう、リズムはヨレるは、モタるは、拍に収まらなくなるはで、どうにもダメダメ。中学・高校生の学園祭バンドのレベル。
  • あと、バスドラムがほとんど聞こえないのだが、バスドラが無いバンドが多いのだろうか。


妙に録音が良い
意外なことに、アナログLPだが音は非常にクリアで鮮明、ノイズも無い。ただし、録音技法があくまでクラシックや民族音楽の撮り方なので、ロックっぽい迫力とは無縁。西側のハードロックとかにある、コンプレッサーやリミッターで音を圧縮して音圧上げて迫力を出す、という手法を知らないか、そういう機材がなかったのかもしれない。逆にマイクロフォンとかは西側ではヴィンテージ扱いされるいいやつだったのかも。


家族や兄弟、親戚一同でやってるバンドが多い
こういうのは明らかに元は民謡とか民族舞踊のバックをやっていた連中なのだろう。ジャケ見るとそっくりの顔のヤツが何人もいたりして、天然でクラフトワークのジャケみたいになってる(笑)。


いやー、すんばらしかったっす。今年最も豊かな音楽的な収穫だったかもしれない、衝撃度という点で(笑)。