8/6 赤坂ノミド音楽会@赤坂 橋の下

「ノミド音楽会」と題された朗読や演奏のライブに行ってきた。


俺は出演者のかたをほとんど存じ上げなかったのだが、現代短歌や現代詩や演劇関係の人たちみたいだ。


ちなみに「橋の下」は赤坂見附のジャズ喫茶で、ホントの橋の下でライブが行なわれたわけではない(笑)。


Jazz&Coffee 橋の下
http://www.asahi-net.or.jp/~qq6t-ookb/


うなぎの寝床のような狭い店内は満員。店の奥のほうを少し片付けて演奏スペースにしてある。お客さんは短歌の結社や詩の同人関係者なのかな。俺は開演間際にたどり着いて、出口近くで聴いたのだが...脇にある飲み物用の古い冷蔵庫のモーター音がまるで原付バイクのアイドリングのようにデカくて(苦笑)閉口した。

  1. ひろたえみ(vo, p, リコーダー)+紺乃卓海(ダンス)
  2. ハヅキヤスミ(朗読)
  3. 雪舟えま(vo, g, 朗読、オルゴール)
  4. 入間川正美(cello)
  5. ハヅキヤスミ(朗読)
  6. 久米貴(vo, p)

始めはひろたえみさんが、踊ってる紺乃卓海さんに筆で文字を書いていくボディ・ペインティングのパフォーマンス。ひろたさんはライブのポスターやチラシの文字も書いているようだが、本格的に書道をやっているらしく、芸術的に上手い。


続いてリコーダーやピアノで弾き語り。ニコの「Roses in the Snow」("The Marble Index" 所収)や、タイトル不詳の曲を何曲か。「Roses...」は、ニコのヴァージョンはハーモニウムの弾き語りが荒涼とした冬枯れの光景を思わせるのに対して、ピアノの低音をゴンゴン叩いて、ゴシックな鬼気迫るような雰囲気で。

Marble Index

Marble Index


最後は、"Bye-bye Blackbird" と "Over the Rainbow" と "Aura Lee (Love Me Tender) " をまぜこぜにした歌。


ハヅキヤスミさんは、普段は佐藤というお名前で活動しているそうだが、「8月は夏休みなので「葉月休み」」と(笑)。前後に2セット、10分ほど朗読を披露。


俺、全然知らなかったんだけど、最近、いわゆるショートショートより短い「超短編」って文芸があるのね。


こういうの↓らしい。「超短編マッチ箱」という同人誌(...なのかな?)もあるみたい。
Microstory.Org - 超短編
http://www.microstory.org/
超短編*アラヤシキ
http://homepage2.nifty.com/helpless/index.html
http://homepage2.nifty.com/helpless/txt/match_forsale.html


ハヅキさんはここの短編から何篇か朗読。舞妓見習いの女の子が主人公のシリーズが良かった。関西のかたらしく、はんなりとした京都弁が心地よい。


雪舟えまさんは、詩の朗読と自作曲(「風邪で死ぬのが夢」とか「ウサギのおじさん」とか)やスピッツの曲を弾き語り。不思議ちゃんっぽいキャラの人で、その声は小さくか細い囁き。だがこういう声でしかできない表現、というものがあるのだ。森田童子とか、「詩のボクシング」チャンピオンの若林真理子の声なんかを思い起こさせる。


あと自作のインスト曲を、オルゴールに通して(穴を開けたロール紙をオルゴールに通す)演奏(google:曲譜カード式オルゴール)。ナイーブで儚げなメロディを聞かせる。


使ってたオルゴールはこういうの↓
http://www.rakuten.co.jp/yokoi/419532/
俺はショップの関係者(文字通り「回し者」)ではないが。


ちょっと脱線するが、このオルゴール、宇波氏とか杉本氏とかヴァンデルヴァイザー楽派の曲に使えね? 図形譜面とかタイミングの指示書をこのカードに転記して、数人でひたすらオルゴールのクランク回して演奏。


「....ポン....」
「............ピーン..........」
「............(無音).................」 とか。


閑話休題


入間川氏は前半はアルコ中心、後半はピチカートやコル・レーニョ中心の演奏。黒板を爪で一瞬こするような鋭い音のアルコ。カマイタチのように、またはルーチョ・フォンタナ(google:ルーチョ・フォンタナ)のキャンパスを切り裂いた絵画のように、耳と空間を切り裂いていく音。


後半には、6月のプロトシアターでのソロのときにも聴かれた、出音を徐々に非常に小音量にしていってどこまで音として成り立つかを探るような演奏も。カッ・カッカッ・カカカカ...と弦を弓で叩いて、ちょうどレゲエのダブでエコー音のリピートが消えていくような奏法。


ただ、前述のように、俺の聴いてた場所の環境が劣悪で、小音量になるとエアコンやら冷蔵庫やらカウンターの雑音やらでかき消されてしまうこともしばしば。このときだけでも無理にでも前のほうに出たほうが良かったかなぁ。


入間川氏の最近の充実振りは、Web-Criでの野々村氏のレビューに詳しい。必読(他力本願)


Critique Site on the Web "web-cri.com"
http://www.web-cri.com/
("Live Review"→「入間川正美:セロの即興もしくは非越境的独奏'06 vol.1/2」


トリの久米貴氏は、これまた不思議なスタイルのシンガー・ソングライター(という形容でいいのかな?)。Webで検索すると、バンドやったり(楽器はギターだったりサックスだったり)演劇やったり短歌やったり詩をやったりと多才な人のようだ。


この日はピアノの弾き語り。ピアノの演奏は、ロバート・ワイアットや弾き語りのときのジョン・グリーヴスみたいな、不協和音を多用したアルペジオをハラハラと連ねていくようなスタイル。んで歌が、強烈な、浪花節調というか詩吟や義太夫節語りみたいなスタイル(何か日本の伝統芸能を習っているようなことをMCで言っていたけど失念)。ちょっと想像がつかないかもしれないが、本当にそういうスタイルなんだから仕方がない。


歌は、さすがに短歌や現代詩をやっているだけあって、言葉遊びやオノマトペを多用した歌詞が、時にはつんのめるように、また時には吃るようにして、歌のリズムを引っ張っていく。コトバがウタのリズムを駆動していくので、自然とシンコペーション変拍子気味になっていく。最近のJ-POPや若者の作る曲によくある「まず打ち込みから始める」曲とは正反対の曲調。


聴く人を選ぶタイプのアーティストだとは思うが、ハマる人は恐らく目茶目茶ハマるだろう。早川義夫とか高田渡とか友川かずきとか弾き語りのときの遠藤ミチロウなんかの、クセとアクの強いシンガーが好きな人は聴いてみるといいかもしれない。


かつてアルバムも作ったようだが現在は品切れの模様。残念。
http://www.ne.jp/asahi/aozora/record/cd/cd.html


出演者のかた達及び関係サイトは下記のようだ。
(もしご迷惑であれば、「bushdog-yanoアットマークmail.goo.ne.jp」までご連絡ください。リンク削除いたします。)


歌人集団 かばんの会 かばんWEB
http://www.kaban-tanka.jp/index.html


しゃぼん暮らし - ひろたえみさん
http://www.enpitu.ne.jp/usr7/71107/
http://www2.diary.ne.jp/user/116244/


Caをつつくひなどり - 紺乃卓海さん
http://www.geocities.jp/xmqds750/index.html


地球の恋人たちの朝食 - 雪舟えまさん
http://www.fastwave.gr.jp/diarysrv/mami_ema/