8/2 スアール・アグン@ティアラこうとう
バリ島の竹ガムランこと“ジェゴグ”の楽団「スアール・アグン」の来日公演に行ってきた。こないだのバリ旅行では予約まで入れたのにドタキャンくらったので(さすがバリ・笑)リヴェンジとして。
SUAR AGUNG オフィシャル・ウェブサイト
http://www.suar-agung.com/
JEGOG(ジェゴグ)とは
http://www.suar-agung.com/jegog.html
バリ島西部・ヌガラの伝統芸能として伝わった巨大竹筒打楽器。1チームが14台で構成されたアンサンブル演奏。最も大きな竹は長さ3m、直径18cm、肉厚3cm、この竹の音は人間の耳が聞き取ることができる最も深い超・重低音を発します。(後略)
会場のティアラこうとう入口前の広場では、雑貨・衣類・音楽CDなどちょっとしたエスニック商品の手店が出ていた。バリの料理“ミーゴレン(バリ風焼きそば)”と“ナシゴレン(バリ風チャーハン)”を出すネオ屋台(トラックで営業するお弁当や料理のも!早速行列に並んで食す。ん、なかなか。合格点。
どうやらこのお店↓のようだ。
http://neoyatai.com/jalan.html
ネオ屋台.comより。
http://neoyatai.com/
同じく会場前広場では、地元深川地区のガムラン愛好会「深川バロン倶楽部」によるガムランとバリ舞踊の演奏も。炎天下の灼熱化したコンクリートと石の地面の上、お疲れ様でした。綺麗なお姉さんたちはともかく、バロンダンスになるとおびえて逃げ惑う子供多数(笑)。
盛り上がりました、バリ・フェスティバル - 門前仲町いきいき情報局
http://www.mon-naka.com/blog/index.php?ID=308
ホール内の舞台の様子は撮影禁止だったので(携帯向けるとすかさずお姉さんが止めに入ってた)、公式サイトの画像か、下記のブログ検索で写真を載せてる(笑)人のを見てもらうとして:
スアール・アグン - Yahoo! ブログ検索
http://blog-search.yahoo.co.jp/search?p=%A5%B9%A5%A2%A1%BC%A5%EB%A1%A6%A5%A2%A5%B0%A5%F3&btn=%B8%A1%BA%F7&fr=my-top&tab=%A5%D6%A5%ED%A5%B0&toggle=
客電落ちると、会場後方の扉から、バリダンスのお姉さん2名を先頭にしてスアール・アグン楽団一行が登場、手に手に竹製のギロやマラカスのような楽器(これはこの楽団オリジナルの創作楽器で伝統楽器ではないようだ)客先を練り歩いてステージに。以下曲名をパンフレットから転載。何のことかわからないと思うが(笑)。
【前半】
- Ba KulKul
- Tabuh Teruntugan
- Tabuh Dharma Kusuma
- Mubarung
【後半】
- Tari Jinamurti
- Kendan Gae Gae
- Tabuh Tiyng Sangkep
- Tabuh Bagog
- Gerantang Pelog
- Pemungkab Sabdha
- Tari Peringga Dewi
現在のジェゴグという芸能は、一時期為政者から禁じられて廃れたものを復刻したものなので、この楽団の公演も純粋な伝統芸能を今に伝えるといういわゆる民族音楽とは若干ニュアンスを異にする。演目の多くは復刻後に新たに作曲されたもの。ある程度ショーアップされた興行として出来上がっていて、客先をさかんに煽って手拍子でリズムを取らせたりする。楽団の立ち位置としては、日本の芸能山城組とか、ヨーロッパ古楽を下敷きにしたロバの音楽座みたいな感じなのかな。
さて。
始まってみて、まず驚いたのが、最も低い音を出す竹楽器“ジェゴグ”の重低音だ。
2・3メートルある馬鹿でっかい竹をゴム製のマレットで叩くのだが、音が低すぎてもう、パーカッションの音に聞こえないの。聞く前はてっきりバス・マリンバとかアフリカの木琴“バラフォン”を低くしたような音を想像していたのだが、ぜんぜん違う。パーカッシヴ、パルス状、という音ではなくて、変電所のダイナモみたいなドローン音。または、グリークラブなどの男声合唱団でバスとバリトンの人を大勢集めてハミングさせたようでもある。
ム゛〜〜〜〜〜ンンン ム゛〜〜〜〜〜ンンン
てな音が公演の間じゅう、ずっと流れているのである。
ネットで検索してみると、↓ここら辺でCDの音源を試聴できるが....。
http://www.suar-agung.com/jegog.html
http://www.rakuten.co.jp/bali-indah/492557/492559/
google:Jegog 試聴
高音域でキャカポコいってる演奏の背後でかすかにストリングスやハミングのように聞こえるのがそれ。PCでは全然分かんないねぇ。低音部の響きは、もうとてもじゃないが、こんなもんじゃない。おそらくあれは、そんじょそこらのオーディオ装置では再生不可能だろう。
聞こえないけど、明らかに人間の可聴域以下の音がうねりとして出ている感じ。音というよりは物理的な空気の振動で、だんだん足の裏やら背中やらが痺れてくる。「うわ、指先がジンジンしてきた」「持ってかれる」と女房。
曲が進むにつれて、明らかに“落ちて”ウツラウツラし始める観客多数。かくいう俺も何度か意識が遠のいた(笑)。なんか、音で出来たマッサージチェアに座っているようだったもんなぁ。
前半最後の Mebarung という曲は、左右に2つのバンドが同時に演奏して“バトル”を繰り広げる曲。この日最も激しい演奏。ガムランという音楽で一般的にイメージされるミニマル・ミュージック的なものとは異なり、フリー・ジャズのドラム合戦みたいな激しさだ。
演奏が最高潮に達した頃、ステージ向かって左側のバンドのジェゴグを演奏していた奏者がトランス状態に陥って暴れ始め、ステージ前方に駆け出そうとする。スタッフが数人がかりで押さえつけてステージ袖に引っ張り込む。続いて右側のバンドのジェゴグ奏者がケイレンし始めて楽器から転がり落ち、やはり引きずられて行って引っ込む。うわぁ、ガムランで本当にトランスになる人を初めて見た。女房も「あれ演出じゃなくてマジだよね?」と言っていたが、あれはガチだったと思う。
後半の演奏は、比較的抑制の効いた演奏で、独自の創作楽器を使ったりした楽しい演奏。
ショーアップされた公演としても嫌味にならずに最後まで楽しめたのは、やはりバリの音楽の豊かさというものなのではないだろうか。チラシやWebの情報によると毎年のように来日してリピーターも多いとのこと。さもありなん、という印象だった。