7/28 (h)ear rings vol.9@Loop-Line

  • 吉村光弘(microphone feedback)
  • Sachiko-M(sine wave)
  • 大蔵雅彦(as, bcl)
  • 秋山徹次(g)

俺は遅刻して吉村ソロの終わり間際に入場。吉村氏のソロが2〜3分しか聴けなかったのが残念。前半は、短め(各10分程度?)のソロを交代で。照明暗転したまま次の演奏者に入れ替わる。後半はやや長めのデュオ。


前半

  1. 吉村ソロ
  2. Sachiko-Mソロ
  3. 秋山ソロ
  4. 大蔵ソロ

Sachiko-Mソロは、サイン波のみを使った演奏。コンタクトマイクやスイッチングノイズは使用せず。


この日は、微音や可聴域ギリギリの超高音域などは使わず、かなりの音量で、けっこう耳に痛い帯域の音で「ピーーーーーーーーーーーーンンン」と聴衆の耳を責め立てる。Sachikoさんにしてはストレートな演奏(こういう演奏に「ストレート」という形容もないかも知れないが)。わずかに音量の変化をつけることで音のモワレ模様を作ってみせる。唐突にブツッと途切れるようにして終演。終わった後もしばらく耳鳴りとして音が残っているような感じがした。


秋山氏は最近良く使ってるフォークギターにマグネティック・ピックアップをつけてPAに繋いでいた。そのためサスティーンの長めな、ややエレキギターっぽい音。


演奏はプリミティブでナイーブな爪弾き。マザケイン・コナーズのギター(ジム・オルークとのデュオとか)を思わせる。あと武満徹のギター曲(「フォリオス」とか「エキノクス」とか。大好き♪)を超スローにして枝葉を払って幹だけにしたような。


大蔵氏はこの日 "tube" (ホースにサックスのマウスピースを繋げた自作楽器)は不使用。前半はアルトサックス・ソロ。


まず、耳に突き刺さるような鋭い息音から開始。「一息一音」つまりブレス1回でロングノート1音、という感じの演奏。息音と実音を交互に出す。実音のほうは、引き攣ったような掠れた音で、鋭い息音との対比が面白い。一貫してストイックで、なんか“サムライ”っぽさを感じた。


後半

  1. 吉村+Sachiko-Mデュオ
  2. 秋山+大蔵(bcl)デュオ


吉村・Sachiko-Mデュオは、ステージ向かって左に吉村氏・右手にSachiko姐さん。絵的には、なんか超能力者どおしがテレパシーや念力で対決してるみたいだった(笑)。


昔、“超能力者”の清田益章だったか高塚光*1だったかが、「“力”を使ってる時ってマンガや映画にあるような“コメカミに青筋立てて踏ん張る”みたいなことは有り得ない。もっと静的で傍目からは何やってるか分からない、寝てるように見えるだけだろう」てな話をしていたのを読んだことがある。つまりドラゴンボールとかジョジョみたいのはホント(?)の超能力では有り得ない、と。


この二人の競演って、見た目、そんな感じだった。二人とも座って静止したまま、首をうなだれてほとんど動かず、時折り手元がわずかに動くだけ。だが、出てくる音は正反対に非常に動きの豊かなダイナミックなもの。


サイン波とフィードバック音の高周波が大きなうねりをなして部屋中をのたうち回る。よくSFやファンタジーのアニメで“力”とか“オーラ”を表現するときに蛇や触手のような光が手元から伸びて相手に向かっていく、という風にするが、アレが音で出ているみたいな印象。ひっじょーに面白かった。


変わって秋山・大蔵デュオ。秋山氏は前半とは打って変わって、一貫してスライドバーを使用。大蔵氏はバスクラリネット。考えてみたらスライドギター+バスクラなんて組合せを聴くのは初めてである。同じギター+バスクラでも前回行ったスズキ+小森デュオ@なってるとは対照的な、音楽が骨組みだけになっているような。


秋山氏の、フレーズになりそうでならない「ウニョ〜ン」というスライドと、大蔵氏の、前半と同じくストイックに息音とかすれた実音を交互に一音吹くという演奏。フリーな即興でバスクラというとお約束のように「ボギャブギャ」というフリーキーな音を立てる演奏になりがちなもんだが、絶対にそっちには行かない、という。


どれも良かったけど、この日の白眉はやはり吉村・Sachiko-Mデュオだったと思う。このコンビで録音とかすればいいのに。

*1:出展失念。だいぶ昔、南伸坊が当時の“時のヒト”と対談するという雑誌連載か単行本だった気がする。ちなみに俺このテの話題――超能力とかオカルトとかニューエイジとか――には全く興味がないので正直どうでもいい。