レビュー:4/21 Jim Denley+Sachiko M

Loop-Lineで行なわれたSachiko-Mさんのセッションに行ってきた。


Jim Denley+Sachiko M, Anthony Guerra+徳永将豪+直嶋岳史
http://www.loop-line.jp/2006/04/more.html#a000018
tanzaque web - 直嶋岳史氏のサイト
http://us.geocities.com/tanzaque/concert.html
ジム・デンリー来日公演 - Improvised Music from Japan
http://www.japanimprov.com/japantour/jdenley/index.html


ジム・デンリー氏もアンソニー・グェラ氏も俺は全然知らない人で、勿論聴くのは初めて。デンリー氏とSachikoさんは共演経験ありらしい。前半がグェラ・徳永・直嶋トリオ、後半がデンリー・Sachiko-Mデュオ。

  • Anthony Guerra:ギター
  • 徳永将豪:アルトサックス
  • 直嶋岳史:ミキサー

グェラ氏はサウスポーのギタリスト。偶然にも先日の日記(http://d.hatena.ne.jp/Bushdog/20060421#p1)のとおりだ(笑)。ギターはエピフォンのセミアコ、機材はディレイとE-Bowとヴァイオリンの弓、アンプはつまみが2つしかないメーカー不明の古いモデル。


徳永氏はいつものとおり椅子に掛けて背筋をまっすぐに伸ばして吹く。仕事帰りらしくスーツのまま。サックス奏者には珍しい、淡々とした音を出していくタイプの演奏。サックス奏者はたとえ小音量や息音でも、とかく“荒ぶるブロウ”にいってしまいがちだが、そっちには決して行かずに、感情や情念を乗せない演奏に終始していた。その平明さは、どこか山内桂氏の演奏を思わせる。


そういえばこないだ、ある人に1960年代の“二十世紀音楽研究所”主催「現代音楽祭」(一柳慧が帰国したときね)の写真を見せてもらったのだが、代々木オフサイトの演奏風景そっくりなのには思わず笑ってしまった。ギャラリーの隅で椅子に掛けてサックス持ってうなだれてるという(笑)。ただし全員背広姿なの。徳永氏が吹いてるのを観て、それを思い出した。


直嶋氏はいつも使っている、骨董品のようなミキシング・ボード。音量調整するのがフェーダーじゃなくて丸いツマミなの。これにイヤフォンをつないでフィードバックを起すようにしてあるみたい(詳細は不詳)。あとヴァイオリンの弓でこのミキサーのボディを弾いて(!)キーキー、カサカサいう音を出す。


ザーーーッというノイズとかキーーーンというフィードバック音の合間にミキサーのアルコ(?)の音が重なる。やってるところを観てると何と言うかフルクサスの冗談ハプニングみたいなんだが(失礼!)出てくる音は、意外にもメランコリックで繊細な響き。なんか日曜の午後に雨音をずっと聴いているような。


問題はグェラ氏で....。ギターのネック側(ナットのあたり)を弓弾きしたりE-Bowで音を伸ばしたりアンプとギターでフィードバック起したりと色々やるんだが、これがどれも面白味がない。サウンド的に魅力や逆に引っ掛かりがあるわけでもなく。


特に、他の二人を掻き消すような大音量のフィードバックを延々轟かせたりするところは最悪。あえて轟音を響かせることでその場に異化作用を持ち込もうという意図も見えず、ただウルサイだけなの。こういうのは単なる“台無し”というんである。

  • Jim Denley:
    • アルト・サックス
    • 改造フルート: サックスのマウスピースを取り付けてソプラノ・サックスみたいに吹けるようにしてある
    • そのフルートの、残った頭部管(唄口(うたくち)の部分)
    • ピッコロらしき小型の横笛
  • Sachiko-M:サンプラー

デンリー氏は、椅子に座ってズボンを膝まで捲り上げ、サックスを斜めに傾けてカップを膝の横でミュートして吹く、というスタイル。ジャック・ライトのふくらはぎに当てる“シシャモ奏法”よりさらに捲り上げるのだが、なんというかちょっとその、かっちょ悪くね?(^_^;)だったら膝丈のバミューダみたいのにすればいいのに、なんて思ってしまった。


デンリー氏の演奏は、サックス→改造フルート→サックス→フルート頭部管→ピッコロ→サックス、みたいな流れ。やはりアルトがメインでたまに他の楽器に手を伸ばすという感じ。膝でミュートすることで、ピピピピピという電子音のような音を出したりもするけど、アクセル・ドゥナーやザヴィエル・シャルルやジョン・ブッチャーやミシェル・ドネダほど血道をあげてそれ系の特殊奏法を追求してるとわけではないという感じ。


Sachiko姐さんはいつも通り、サンプラーのサイン波とスイッチのブツブツいう接触音。最後、何の合図やアイ・コンタクトもないのに、二人の出す音がピタリと同時に止まったのにはビックリした。顔を見合わせてしてやったり、という笑顔を交わして、終演。


んー。悪くはなかったけど....。やっぱドネダやジャック・ライトに比べると、やや小粒っぽい印象は免れない(比較の対象が悪いっちゃぁそれまでだが)。俺、先月のFrom Between Trioの余韻がまだ尾を引いてるみたい。それはデンリー氏のせいではなくこちらの問題なわけだが。同行したU君は素晴らしかったと言っていたし。