俺とFred Frith。

俺、何を隠そう、親のおこづかいではなく自分のバイトの金でチケット買って行った最初のコンサートが、1981年フレッド・フリスの初来日なのである(ヘンなコドモだ)。


当時フリスはArt Bears "Winter Songs" ソロの "Gravity" "Speechless" を出してブイブイいわしてた頃で、雑誌「Fool's Mate」(ビジュアル・ロック誌になる前、ユーロ・ロック/ニュー・ウェーブ/サブカル雑誌だった頃ね)で北村昌士氏が当時ヘンリー・カウ/レコメン系ミュージシャンをプッシュしてたのに煽られて(笑)行ったの。俺が行ったのは:

日仏では、前半がいわゆる“テーブル・ギター”のソロと、後半が近藤氏とのデュオ。


平たい、まな板みたいな板っぺらにギターのネックを2本ネジ止めしたダブルネック・ギターをテーブルに横たえて、乾いたお米か豆をザラララーーっと弦の上にふりかけるのからスタート、マリンバのマレットでボディと弦をドカドカ叩いたり、ヒモや針金やワニ口クリップで弦をプリペアしたり、メトロノームを弦の上に乗せてカチカチ言う音を拡声して聴かせたり。


「(振りまいたものを)片付けてから後半を始めるから」とかMCして休憩に入ったが、結局片付けなかった(笑)。


近藤氏とのデュオの時は、ギブソンのES-345を使用。ナットの辺りにネジ止めした金具にエレキギターのピックアップが吊るしてあり、押弦した指とナットの間の音を拾うように改造されてた。だから、ギターのお尻とアタマの両方からケーブルが伸びてるの。んで高速のタッピング(当時はライト・ハンド奏法と呼ばれていた)で演奏すると、指・ブリッジ間の音と指・ナット間の音がステレオで出力されてパラポロピロリロと会場を満たす。


一方の近藤氏は例の「パカパカカカカッ!」という独特の音色のトランペットで会場中を暴れまわって吹く(当時はまだ今みたいな大規模なエフェクトシステムは使ってなくて、ワウワウ・ペダルと小さなアンプくらいだった)。会場内を練り歩き、しまいに客席の椅子の背を渡ってステージに戻ったのには度肝を抜かれた。


新宿ロフトではギューギュー詰めの中、蔦木兄弟が足踏みオルガン(小学校によく置いてあるやつ)を踏みながら鍵盤を一つ一つガムテープで固定していきトーン・クラスターを作っていく、というパフォーマンスと、グンジョーガとの共演。俺はこのとき初めて、いわゆる暗黒舞踏的な踊りに接した。何か見てはいけないようなものを見てしまった気がした。


このとき灰野敬二との共演もあったのだが、俺は観ていない。灰野氏とのライブは「ミュージック・マガジン」で非常に酷評されてたんだが、その後「Fool's Mate」に載ったフリスのインタビューでは「灰野はロックのインプロヴィゼーションの本質をつかんでる非凡なアーティストだ」とか絶賛されていて、そのライターさんはとんだ恥をかくことになってしまったのだった。


...という様々を未だに昨日観たように思い出せるぐらい、強烈な印象が残っている。
未だに昨日のように....って25年前かよ!!!(=Д=;)


ソロのパフォーマンスは、"Fred Frith Live in Japan, Vol.1,2" と題して2枚のLP(2枚組みではなく)でリリースされたが...その後リイシューされていないようなので入手困難だろう。


突段とのセッションは後にカセットでリリースされ、90年代にCDでリイシューされた:


FRED FRITH&突然段ボール

FRED FRITH & 突然段ボール

FRED FRITH & 突然段ボール