海の上のピアニスト2


最近のハリウッドは名作映画のリメイク企画が盛んだが、それに劣らず花盛りなのがヒット作の“続編映画”企画だ。

と、まるでエイプリルフールのような企画がてんこ盛りだが、また一つ、新たな続編の制作が発表された。


ニュー・シネマ・パラダイス」の俊英ジュゼッペ・トルナトーレが手がける「海の上のピアニスト2」。

一作目はこちらね。

海の上のピアニスト [DVD]

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【ストーリー】
その卓越したテクニックで、宿敵“ジャズの王様”スコット・ジョプリンをピアノ対決でくだし、平穏な日々を取り戻した1900(ナインティーン・ハンドレッド)。だがその平穏も束の間の夢にすぎない。彼の前には、次々と新たな敵が立ちはだかるのであった。


「フフフフ...、坊や、アタシのショパンに勝てるのかい?」
「…!お、お前は、フジ子・ヘミング!…生きていたのか…!」
「そうさ、アンタを倒すために地獄から舞い戻ってきたのさ!」
(すいませんねぇ、ファンの皆さん…)


さらに、噂を聞きつけた全世界のピアノ戦士(?)が続々と集結。1900の住む客船「バージニア」号は、血で血を洗う“天下一ピアノ武闘会”の会場と化していくのであった。


(中略。まぁジャンプ系マンガによくある、ああいう舞台で・あの手のキャラが・ああ戦う展開を想像しとけば間違いない)


そして遂に辿り着いた最終ステージ。待ち構えるのは、白の学ランに身を包んだ最強のピアノ戦士軍団、“ピアノ四天王”。なぜ白学ランか。理由などない。ただ“悪”といえば白学ランだからだ。その最強メンバーとは:

(3人までを倒す経緯は省略。「終わりか...。フ、少々手こずらせたな」「こ、このままじゃ終われないんだよぉっ!」「な、何ぃ!確かに倒したのに!」とか何とか、その手の展開)


最後の対決。1900対グレン・グールド。録音を拒否したピアニストと録音こそ真実とするピアニストの対決(そもそも外に出られない二人の対決は、果たして成り立つのか?まぁそれはそれとして)。


「待ちたまえ、1900。僕は君と闘いに来たのではないんだ」「何だと!」「コレを見るがいい!」


グールドがカーテンを引くと、バージニア号の船倉はいつのまにかレコードのプレス工場に改造されており、カラフルな衣装を身に纏った色黒の小人のオヤジが大挙してLPのカッティングとプレスに従事している。


ウンパルンパがなぜここに!?」「ウィリー・ウォンカのチョコレート工場から出向してきてもらってるのさ」


ウンパルンパ達は、レコードを作りながら歌を歌っている。


グレン・グールドグレン・グールド
♪複製時代のピアニスト
グレン・グールドグレン・グールド
♪複製時代のピアニスト

♪針を落とせば目の前に
♪弾いているよに現れる
♪貴族やブルジョワじゃなくたって
♪すてきな音楽聴けるのさ

グレン・グールドグレン・グールド
♪複製時代のピアニスト


「見たまえ、このレコード工場を。ここでは一時間に何千枚ものレコードが生産されている。このレコードが全世界に行き渡ったとき、セカイが僕の足元にひれ伏すのさ。君がここで僕に勝とうと勝つまいと!」


グレン・グールドグレン・グールド
♪複製時代のピアニスト
グレン・グールドグレン・グールド
♪複製時代のピアニスト

♪まずい演奏やミスタッチ
♪編集しちゃってかまわない
♪スタジオにこもっているほうが
クリエイティヴってもんだから

グレン・グールドグレン・グールド
♪複製時代のピアニスト


「1900、僕と組まないか?」
「お前のようにピアノを悪のために使う奴と組んだりするとでも思っているのか!」
「果たしてそうかな?思い出してみたまえ。君は生まれながらにしてセカイから疎外された存在だったのではないのか?そこまでピアノの腕を磨いたのも、無意識のうちに君を拒絶したセカイに復讐したかったんじゃないのか?君のアルバムを作れば、全世界をピアノで支配することだってできるんだ!君ならできる。さあ....」


「や、止めろぉ!俺のココロの中に入ってくるなぁっ!」


...爆風が収まった後、そこには、逆立った金髪と筋骨隆々とした身体に変身した1900の姿があった。


「やりやがった!1900のヤツ、遂にスーパーピアノ戦士に!」「...この展開、『ドラ○ン・ボール』というよりは『極道一直線』のテイストに近いのでは...?」「げげんちょ!!」


「みんな!みんなの“ピアノ玉(?)”をオラに分けてくれ!」


1900の必殺の一撃で、レコード工場は吹き飛び、グレン・グールドは船腹に開いた巨大な亀裂から荒れ狂う漆黒の海に投げ出されていった。


「これで勝ったと思うな!人間は、音楽を録音し、大量のレコードにしてて売りさばき、聴衆はそれを集めること自体に快楽を見出すようになる!人が初めて音楽を聴くのは複製されたメディアを通してであることが当たり前になり、人は楽器の演奏や歌を聴いて『レコードとそっくりだ』と感動し評価するようになる日が必ず来る!そう、君の生まれた年の100年後、2000(ミレニアム)という名前の子供が生まれるころには、人類の聴取に対する意識は全く変わっているだろう!この流れは止まらず、そして二度と元に戻ることはない!最後に勝つのは、この僕だァーーーー!!!!」


グールドは絶叫しながら奈落の底に落ちていった。


闘いの終わった戦場には、レコードの乗っていない1台のターンテーブルが残され、そぼ降る雨音にも似た静かなノイズを発するばかり。


「確かにヤツのいうとおりなのかも知れない。流れは止まらず、元に戻ることはないのかも知れない。音楽を、録音機材やメディアのなかった頃と同じ意識で聴くことなどできなくなる時代が、いつか来るのかも知れない。


....だが、そんな時代でも...たとえレコードを何度繰り返し聴いたって、音楽を聴いて流した涙が頬を伝い登って目に戻っていくことなどありはしないし、一度流れた涙と次に流れた涙が同じ涙であるわけはないだろう?


...であれば、複製時代の音楽聴取というものは、以前の時代に増して、“いま・ここ”で音楽を聴いた、そのことを強く意識せざるを得ない時代だと言えるのではないだろうか...」


「先輩っ!」
「わっ!なんだ、君は」
「闘いをずっと見ていました!弟子にしてくだサイ!」
「で、弟子っていきなり...。君の名前は?」
野田恵デス!“のだめ”と呼んでくだサイ!」
「そ、それよりも君...。まず風呂に入りたまえ。ちょっとその...匂うぞ」「ぎゃぼ〜(泣)」


そう、1900の闘いはまだ始まったばかりなのだ。弟子を加えて、戦え1900、頑張れ1900。(了)


んな映画あるわけねぇだろ!!