12/5 中谷達也+オードリー・チェン@上尾バーバー富士


被即興創作的音樂”中谷+チェン・デュオに行ってきた。これが、素晴らしかった割には集客がイマイチだったので、緊急プロモーションとして掲載する(ゴメンなさい他の日記の人達)。


チェンさんってインプロ始めてまだ3年だって?世の中にはまだまだ知られていない才能というのがあるもんだ。


面白いから行っといたほうがいい>関西方面の即興ファン。つーか行かないとたぶん損


中谷+陳 二重奏
被即興創作的音樂 來自美國 紐約-巴爾的摩
2005年亞洲公演遊覽 11月中国-12日本
http://www.hhproduction.org/Nakanati_Chen%20Duo.html

12月6日(火)京都 ビバ・ラ・ムジカ 075-723-3297

対バン:田中 康彦(ギター),鈴木 ちひろ(鍵盤),植松 渉(打楽器)

12月7日(水)神戸 Big Apple 078-251-7049

12月8日(木)広島 One Love 082-246-3767 ゲスト:原田政嗣(声)

12月9日(金)徳島 喫茶アン info:080-3162-7509

12月10日(土)岡山 "ネコじじい”8:30PM

info: 090-4651-0836 Mail: akadax@kd5.so-net.ne.jp

「赤田晃一&鷲尾美由紀(わしおみゆき) 結婚パーティー『3次会』

共演:赤田晃一(Sax)、鷲尾美由紀(keyboard & mouth-organ)

12月11日(日)大阪Bridge : フェスティバル・ビヨンド・イノセンス

客席向かって左に中谷氏、右にチェン女史。中谷氏は、ドラムはフロアタム1個。スネアスタンドに乗せて打面をやや高めにしてある。フロアタム自体を本来のドラムとして“普通に”鳴らすことは稀で、その上に色々な物を乗せて叩いたり擦ったりする際の一種の“共鳴箱”として使う、というスタイル。レ・カン・ニン(大太鼓を使用)や牧原利弘氏(ボトムヘッド*1とスナッピー*2を外したスネアドラムを使用)と同様なスタイルだね。使ってたのは:

  • リン*3:大(直径20cm位)×1個、小(直径数cm)多数
  • シンバル数枚:15〜16インチ位のから10インチ位のまで
  • ハンドシンバル(京劇や朝鮮のサムルノリで使うようなの)数枚
  • 割れシンバル大小:カップ*4部分を割れたままにしてあったり、大きく切り欠いてドーナツ状にしてある。そのため全体がフィルム状にペナペナになってしまっているが、それを敢えて使うことでミュージカル・ソウ*5やフレクサトーン*6のような音を出す。
  • スティック各種:刻み目のついたのとかマドラー(泡立て器の棒)とか“ロッド(?)”*7とか。
  • 弓は通常のクラシック楽器用のではなく、古楽器*8か、あるいはどこかの民族楽器用みたいだったが詳細不詳。棹と毛の間の空きが大きいので、弾くパーカッションの曲面に合わせて弓の毛をグイっと包み込むように回すことができる。

チェン女史はだいぶ使い込んだ様子のチェロ1台。

スレンダーで小柄。ショムニの頃の宝生舞にちょっと似てるか、まだ20代だそうだ(若〜い)。ニットキャップにヒップホップっぽいラフな服装。ジョイ・ディヴィジョンのTシャツを着ている(しまった「好きなんですか」と聞くの忘れた)。

バーバー富士のサイトに写真あり:
http://members.jcom.home.ne.jp/barberfuji/

演奏は休憩挟んで2セット。

【前半】

中谷*9

  1. シンバル+リン(大)を弓奏
  2. リン(小)を多数乗せて次々と弓奏していき、重なり合う余韻を聴かせる。これが美しい。
  3. リン数個を乗せておいて、リムショット*10やタムの胴自体を叩く
  4. リン(小)数個に、リン(大)を伏せてかぶせ、“丁半バクチ”のツボを振るようにして回して、中でチンチンガシャガシャいう音を
  5. リン(大)の上にシンバルを乗せてゴリゴリ擦る

チェン

  1. 弦を弾かずに胴をゴムのボールか何かで擦って、ウッドベースのアルコのような低音を出す
  2. ヴォーカリゼーション:割と低いアルトの声でハミング
  3. ピチカート
  4. ピチカート+弓の背で弦を弾く
  5. 弓を勢いよく振って、空気を切る「ヒュッ」という音を鳴らす
  6. チェロの胴の背面を叩く
  7. ヴォーカリゼーション:口を大きく開けて「ウオオオオオゥワォゥ」というような声で

チェン女史の発声は明らかにアカデミックな声楽の訓練を受けた人のそれで、声楽でいういわゆる“喉を開く”とか“頬を上げる”*11という基本がキチンとできているという印象。後で聞いたら、15年くらいずっとオペラをやっていたのだそうだ。納得。


中谷氏の金物(カナモノ)の弓奏はホント素晴らしい。大味さや雑なところがなく繊細でこよなく美しい。この手の演奏をする人の中でも出色なのではないか。さすが "Bowed Metal Orchestra" なんてプロジェクトをやってるだけのことはある。
http://www.hhproduction.org/DISKS.html



【後半】

中谷

  1. 割れシンバル(大):カップを切り欠いてドーナツ状にしてあるヤツでタムのヘッドを擦る。グニョグニョとしならせながら音程や音色を変えてみせる
  2. 大小のリンを乗せて“起き上がりこぼし”のように揺すって音を響かせる
  3. その状態でリン同士をベーゴマでやる喧嘩ゴマのようにぶつけて、「リリリリリ」とブザーのような音を立てる(よくまぁ、こういうアイデアを思いつくもんだなぁ)
  4. リン(大)弓奏
  5. シンバル2枚を持ってタムのヘッドをゴリゴリ擦る
  6. リムにあてて耳に痛いような強烈なノイズ
  7. 針金(マドラー)でシンバルを引っかく
  8. シンバルをガシガシと激しく弓奏
  9. なんと、シンバル中心の穴をトランペットやホルンのマウスピースのようにして吹いて、ラッパのような音を出す!いや、そりゃぁ同じブラス(真鍮)だけどさぁ....こんなことできるんだ....。
  10. シンバルに口つけたままタムのヘッドに押し付けて振動を拡声させる。シューシューいう息音など様々なバリエーション
  11. リンを伏せた上にシンバルを乗せて揺らす
  12. タムのヘッドを色々な棒で擦る
  13. リンどおしを擦ってゴリゴリという音
  14. リンを弓奏してチベットの“シンギングボウル”のような音
  15. シンバルを両手に持って擦り合わす:キツいノイズ
  16. ハブラシ(?)のような棒で擦る
  17. リンでシンバルのカップをゴリゴリ擦る
  18. シンバルを“ロッド”で叩く
  19. リンを撥で叩く


チェン

  1. チェロを置いて立ち上がり、ヴォーカルのみからスタート
  2. いきなり絶叫系(汗)ヴォーカリゼーション
  3. キリキリと軋むような声を喉の奥から絞り出す
  4. 大きめおはじきのような石かガラスを両手に持ち、小刻みにカチカチ打ち鳴らしながら口元に持っていって、口中に響かせてワウワウのように音色の変化をつける
  5. 「オオ〜、ウア〜、ギャ〜」という雄叫び系ヴォイス
  6. リンの弓奏の音に合わせてスキャット
  7. チェロに戻り、アルコ+ハーモニクスで風の音のようなノイズ
  8. 左手のみで小刻みなトリル:電子音みたいな音を出す
  9. アルコで、中谷氏のシンバル弓奏と“デュエット”:当意即妙のインタープレイ
  10. 鼻歌のようにスキャットしながらチェロを指弾き:左手だけのハンマリングだったりピチカートだったり
  11. 中谷氏の“シンバル吹き”に合わせて、チェロのボディ(“肩”の部分)をチューチュー吸ったり吹いたり:二人で同時にやってるとかなり怪しい風景(笑)
  12. 口笛+チェロのソロ
  13. アルコで超高音を響かせる
  14. 左手のみでトリル+スキャット

こんな感じ。中谷氏「疲れないように短めに」とのコトバどおり、そんなに長時間ではなかったが、ダレたりせず、緊張感の途切れない、素晴らしい演奏だった!


終演後、二人のCD "Limn" を購入。このアルバムで、大体この日のライブの模様は分かると思う(買え・笑)


海外のブログに、ものすごい詳しいレビューが。写真も満載。
中谷氏がシンバル吹いてるところも見れるよ。
http://www.bagatellen.com/archives/frontpage/000962.html


このアルバムにゲストで参加してるスーザン・アルコーン(ペダルスティールギター)もこらまたユニークな人だ。なんか、スティールギター版ビル・フリゼルみたいな。ああいうフワ〜ンという浮遊するスタイル。

Susan Alcorn Home
http://www.susanalcorn.com/


ユージン・チャドボーンとも共演してるらしい。ソロアルバムがポーリーン・オリヴェロスのDeep Listeningから出ているようだ。


あと、中国のこんなサイトも発見。

Super Sonic China
http://blog.livedoor.jp/ssc_staff/

Super Sonic Chinaは、<新感覚中国>をテーマに中国大陸でおこる新しい音楽・映像・アートなどをピックアップして、音楽と映像で紹介するDJ+VJイベントです。 日本ではなかなかお目にかかることの無い音楽のなかから、密かに熱い中国のエレクトロニカや電子系音楽、世界中から熱狂的な支持をあつめる北京パンク、ほんの一固まりの濃い輩の集うノイズ・即興音楽界隈など、中国のコアな音楽を集めて、その一部分を少しでも紹介できたらと、企画いたしました。

中谷・チェンの、中国でさる11月に行なわれたライブの告知があった。ポスターがかっこいい。
http://blog.livedoor.jp/ssc_staff/archives/50093245.html 

*1:スネアドラムの底面の皮

*2:同じくスネアドラム底面に取り付ける“響き線”

*3:仏壇でチーンと鳴らす鐘

*4:シンバル中央の半球状の“芯”の部分

*5:弓奏して音楽演奏や効果音に使うノコギリ

*6:flexatone:薄いハガネの板をしならせながら叩いて“ピョヨヨ〜ン”という音を出す効果音用パーカッション。よくアニメ・演劇・TV番組等で「魔法をかけたときの音」に使われるやつ

*7:最近よく見かける、竹ヒゴみたいな木を束ねてササラみたいにした特殊なスティック

*8:バロック式とかいうのかな?俺ここらへん門外漢なんで....

*9:以下特記しない限り、全てフロアタムの上に乗せての演奏である。

*10:ドラムの皮でなく、ふちをカツカツ叩く奏法

*11:モンゴロイド黄色人種)はコーカソイド(白人)に比べて顔面の各パーツがデカくないので口腔をガバッと大きく開けづらい。クラシックの声楽ではまずここらへんの訓練から始まるのだそうだ。