11/19 (h)ear rings vol.7


Improvised Music from Japan 2005にも音源が収録されている吉村光弘氏主宰のイヴェントに行ってきた。


(h)ear rings:吉村氏のサイト
http://www16.ocn.ne.jp/~hearring/

Loop-Line
http://www.loop-line.jp/

LoopLine’s Room:スタッフの坂本氏のブログ
http://d.hatena.ne.jp/loopline/20051123/p1

  • 吉村光弘 (Microphone Feedback) & 小林達夫 (Radio)
  • みずうみ
    • 二村有香(Voice, Object)
    • 塚本佳紹(Slide, 8mm Film)
  • 秋山徹次 & Jeff Fuccillo(Acoustic Guitar)
  • 足立智美 (Gadgets, Laptop, Voice)


開演間際に入場すると、狭いLoop-Lineはすでに満杯。つっても40人くらいだけど。Jeff Fuccillo氏つながりか、外人さんの数がいつになく多い(3割くらい?)。歩くのにも苦労しちゃうなぁ。トイレに苦労しそうなのでなるべく水分を控えることに、と思いつつギネス頼んだけど。

吉村&小林デュオ

開演前のBGMがホワイトノイズに切り替わって一番手の吉村・小林デュオ(と言えるのか?)がスタート。


ステージになっている場所には誰もおらず、二人とも客席に隠れるようにして音を出していた。そのためみんな最初は中々始まったのに気づかずザワザワとしたまま(吉村氏は「それも狙い」とか言っていたが....)。


BGMに聴こえていたのは小林氏が持ち込んでいたソニーのかなり古いラジオ。谷川俊太郎*1が欲しがりそうな。入口近くの床に置いて(Loop-Lineは地下室だからそこでないと電波が入らないのか?)ダイアルを操作している。時折小型のこれも古そうなトランジスタラジオ(iPodくらいの大きさ、ちょうど競馬場でオヤヂが競馬中継聴いてるようなモデル)を近づけて、相互干渉で音を変調させているようだった(何しろ混んでたので良く見えなかったので違ってたら失礼)。


吉村氏はカウンター脇の客席一番奥でいつものステレオマイク/ミキサー/ヘッドホンを使って鈴虫の音のようなフィードバック音。いわば可聴域ギリギリの虫の音。外人さん二人が、演奏始まってるのに中々気づかずに話し込んじゃってるんで、俺、ちょっと振り向いて唇に人差し指あてるジェスチャーをしたら...あわわ、Fuccillo氏ではないですか(思わず変な汗)。


土屋氏はホワイトノイズの変調がメイン。寄せては返す波のように聴こえたり、サク・サク・サクと雪の上を踏みしめて歩く足音のように聴こえたり。それに時折り、ラジオ局の音が遠く聴こえたり、ビービーいうピンクノイズが混じったり。

みずうみ

初めて観る二人。ややコンセプチュアルなアート系パフォーマンスといったところか。ステージには細身でショートカットの二村女史、ステージ脇で塚本氏がスライドや8ミリの映写機を操作。それぞれの曲やパフォーマンスの開始前にスライドでタイトルが出るのがおかしい。

  1. (題名不詳):暗転の中、メレディス・モンクを思わせるウィスパリング調のヴォーカリゼーション
  2. :壁に貼られた紙に8ミリで丸印を映写。ノイズ系のBGM。スクリーンになっている紙を端から徐々にクシャクシャと丸めていく。BGMと紙を丸める音が交錯。丸印の大きさまで丸めて終わり。
  3. 見上げた森:モノクロの、植物の断面の顕微鏡写真のようなスライド画像。発泡スチロールの板をスクリーンに見立てて、何枚も立てていく。発泡スチロールの板を小屋やトランプタワーのように立てかけていくが、立てたそばからカラカラと崩れていく。その様子とスライド映像が歪んで写る様子を見せる。
  4. 苔むした木:再び、メレディス・モンクのようなヴォーカリゼーション。スライドの前に小さなビニール袋を掲げておいて、緑色や赤のインクを注ぎ込むことで、やはり植物のような画像を見せる。かつて60年代のサイケのコンサートで良く見られたような。


...という感じ。んん....まぁ面白いといやぁ面白かったけど....。もうちょい練りあげて欲しかったかな、という気もする。“なんとなくアートな気分”というのはちとヤバいのではないか。

秋山&Fuccillo デュオ

かつて代々木Off Siteで演ったときは伊東夫妻絶賛だった秋山・Fuccilloデュオ。俺は行けなくて非常に悔しい思いをしたので今回は待望だった。フチロ氏はマーチン、秋山氏は“百音ノヒビキ”でも使っていた、拾ったという安いYAMAHAのフォークギター。

  1. 秋山:5フレットにカポつけて、間の多い「ポツン....ポツン」というフレーズにもならないような音。音を“置いていく”ようなイメージ。Fuccillo:けっこう多彩なコードを、やはりポツポツと置いていくような演奏。朴訥な音だが、どれもフォークギターで一般的な和音ではなく、どこか不協和で調子外れな感じ。セロニアス・モンクのピアノの“変”さに通じるような。
  2. 手元のメモには印象として“ヘタウマミニマル”と書いてある(笑)。 Fuccillo:ミニマルなアルペジオやオブリガード(でもやっぱり和音の感覚が変)を鳴らす一方で、秋山:低音のリフと高音のハーモニクスを交互に鳴らす。続いてスライドバーを当てるが、いわゆるスライドギターはあまり弾かず、一種のプリペアの扱い。普通に弾くほうの反対側、つまりスライドバーとナットの間を弾いたり。Fuccillo:後半は、ややハードなストロークでノイジーに掻き鳴らす一面も。
  3. 短めのアンコール:秋山:再びカポ。Fuccillo:どこかの弦を緩めてベロベロの状態にして、弾くと必ずその弦が「ベイィィ〜ン」とビビる状態にした演奏。二人、顔を見合わせて、いわゆるフォークギターの合奏のパロディみたいな演奏。

とぼけたヘタウマ感覚と、セロニアス・モンクがギター弾いたような不安定で変なコード感。たしかにこれは、ジョン・フェイヒーやジム・オルークやローレン・マザケイン・コナーズが好きな人だったら気に入るだろう。終演後、Fuccillo氏にそういう感想を言ったら「あ〜、それはうれしいかも〜」(カタコトだがけっこう日本語話せる)とか言っていた。


(この項続く)

*1:知る人ぞ知るアンティークラジオのコレクターである