Meeting@Off Site Revisited

代々木にある小さなギャラリー、OFF SITE。ここで私達が企画していた即興演奏シリーズ「Meeting at Off Site」も一昨年末をもって終わりました。ある意味、十分その役割を果たしたと考えたからです。しかし、間もなく5年間の活動を一時休止するために4月末をもって閉店する予定のこのギャラリーで、最後にもう一度だけこの会を開こうと企画しました。

  • ケン山崎(perc
  • 秋山徹次(g)
  • 中村としまる(mixer)

黒づくめ+丸サングラスの山崎氏は怪しい漢方医みたい(失礼)。床に座って演奏して色々こすったり掻き回したりしてるからなおさら(笑)。低くセットされたスネアドラムとシンバル、床にリンやらガムランのゴングやら色々の民族楽器系の鳴り物。秋山氏はヤマハのフォークギター+コンタクトマイク。ボディに長い輪ゴムを通して弦をミュートしてある。中村氏はいつものミキシングボード。



【前半】

  • 中村氏のブツブツブツという接触不良音のようなノイズからスタート。次第に高音のフィードバックへ。
  • 山崎氏はリンを叩いて、その倍音を揺らしてモアレのような音像を作り出す。
  • 秋山氏は、こする・引っかく・ヘッド部の弦を弾くなどの微小音をアンプで拡大して聴かせ、普通の(?)音量が出るような演奏はアンプ通さず生で聴かせる。アンプの音はヴォリュームペダルで調整。
  • 山崎氏、スネアドラムを拡声装置というかリヴァーブのように使って金物系パーカッションの残響を響かせる。たゆたいうつろうような倍音の渦。
  • 中村氏は「ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」という高音のサイン波に加えて「ジーーーーーーーーーーーーーーーーー」というブザーのような音も。
  • 秋山氏、ゴムミュートを持ち上げて外したりまた戻したりして音の強弱と音色の変化をつける。かと思えばミュートしたままスライドバーでスライドしてペコペコした奇妙な音を。また、ナイフを弦にはさんでプリペア。
  • 山崎氏、木の実系のパーカッションをジャラジャラ鳴らし、シンバルを弓奏。
  • 中村氏の「ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」というホワイトノイズが全体を包み込んで、終演。

【後半】

  1. 山崎氏ソロ
  2. トリオ演奏

ソロでの山崎氏はシンバルやリンや銅鑼(中国の京鑼(ジン・ルオ)というやつかな?)を交互に弓奏して、うねる金属音の渦のような音の塊を練り上げてみせた。


民族楽器って、俺は聴くのも観るのも、楽器屋でちょこっといじくるのも好きで、民族音楽のCDも一時期ずいぶん集めたことがあった(キングとJVCで出してるシリーズがお勧め)。ああいう楽器ってただ音を出すだけでなんとも良い雰囲気を醸し出してくれるし、聴いてて気持ち良いので大好きだ。特に金属の鳴り物系。
....だが、ただ鳴らすだけで“何とかなってしまう”民族楽器という存在は、“表現”をしようとする音楽家にとっては、なかなか厄介な代物なのではないか。その楽器を“超える”のは、ジャズやクラシックやポピュラー音楽で使われている楽器よりもハードルが高い気がする。ムードに寄り掛かってていいのか、みたいな。ちゃちなエキゾティズムやオリエンタリズムに陥っちゃうという罠が常にあるし。


そこのところ、山崎氏は各楽器の持つムードに流されない、抑制された演奏に徹していたところがポイント高い。音の共鳴や倍音への目配り(耳配り?)は、やはり“いわゆる音響”を経由した人という感じ。特に東南アジアのジング・シンバル(手で持って鳴らす合わせシンバル)をシャーンと鳴らした後で、共鳴してる両方のシンバルの残響を揺らして「ゆいいいいいーーーーん」という倍音を鳴らす演奏なんかが良かったなぁ。


トリオの演奏では、秋山氏はギターに玩具の手裏剣!をはさんでプリペアしたり、日本刀の峰の部分で弦を弾いたり。中村氏は、チューニングの合ってないAMラジオのようなホワイトノイズを出して、空間を潮の干満のような音の波で満たす。山崎氏はそんな中、スネアドラムやらシンバルやら玩具やらを総動員してうねりを感じさせる演奏。


ん。良かったっす。