カナリア

どうしても今日観なければならないような気がしたのだ。
http://www.shirous.com/canary/

オウム(映画では名前変えてるけど)への強制捜査で教団施設から保護された子供のうち最も反抗的だった少年・光一が、引き離された妹を奪還するために児童相談所を脱走する。途中、援交まがいのことをして小遣いを稼いでいる少女・由希と偶然出会い、一緒に“旅”を続けることに。物語は二人の“旅”に、カルト教団での過酷な体験のフラッシュバックが挿入されるという展開で進む。


主人公の男の子と女の子の“眼”が、とにかくいい。凶暴さと脆弱さ・憎悪と淋しさが目まぐるしく交錯する眼光。特に、中学生くらいの頃の広末涼子をちょっときつくした感じの谷村美月が良い。ほんとはこの子が主人公なんじゃないかと思うくらい。


以下アトランダムに。ネタバレあり、注意。

  • 少年と少女が離別した肉親を探して旅を続けるというモチーフはテオ・アンゲロプロス霧の中の風景」を思い出させる(ちょっと霧も出てくるし)。旅を続けるために女の子が体を売ろうとするところも。
  • 全編を通して少女由希によって歌われる「銀色の道」。これがとにかくヒリヒリと“痛い”。

ひとりひとり はるかな道は
つらいだろうが 頑張ろう
苦しい坂も 止まればさがる
続く続く 明日も続く
銀色の はるかな道
JASRAC不許可)

  • カルト信者の人々の人選が凄い。キャラ的に「あ、こういうひと本当にオウムにいた!」という人ばっかり。子供達の監督官を演じる西島秀俊は上祐そっくりだし(笑)、光一一家の入信時に対応する女性信者が、麻原の子供産んじゃった人にそっくり。他の人たちも目が据わってて怖い。母親役の甲田益也子(歳取られましたが矢張りお美しい)も、現実世界に生きる確かな手応えを持ち得ない線の細いボーダーラインっぽい女性を好演。
  • 脱会信者達が身を寄せ合って暮らしているリサイクル工場には、教団によって全財産を騙し取られた身寄りのない盲目の老婆「ばあちゃん」(戦前の美人女優井上雪子が68年ぶりにカムバックして圧倒的な存在感を示す)が引き取られているが、この集団はなぜか老婆を一種“聖なる中心”としてその纏まりを維持しているようにみえる。これはあきらかに天皇のアナロジーだろう(大塚英志「子供流離譚」、いとうせいこう「ワールズ・エンド・ガーデン」を想起せよ)。か弱く保護すべき聖老人。“かわいい”天皇
  • ん〜、あと、何箇所か、コレはちょっと成功していないだろうという演出や設定は、あった。だから、いくつか欠点はあると言わざるを得ない。今はまだ書かないけど。


この映画に関しては、一度では語りつくせないところがある気がする。

これから折に触れて何度か触れるようになるかも知れない。
ネット上でもこれから、「エヴァンゲリオン」や「夕凪の街 桜の国」なんかのように、色々と“読解”の言説がネット上で行きかうんだろうな。