10/8 大谷・吉村・徳永@Loop-Line


10/8にはループラインに大谷能生、吉村光弘、徳永将豪のライブを聴きに行ってきた。じつはループラインに行くのは凄い久しぶり。数ヶ月ぶりではなかっただろうか。なんかうまくスケジュールが合わなかったのだ、申し訳ない。

http://www.loop-line.jp/
http://www.loop-line.jp/2007/10/

  • 徳永将豪:アルトサックス
  • 大谷能生:アルトサックス
  • 吉村光弘:ヘッドフォン/マイクロフォン
  1. 吉村ソロ
  2. 徳永ソロ
  3. 大谷ソロ
  4. トリオ

入場すると、BGMと一緒に既に吉村氏のヘッドフォンがキーーーンシュバシュバというフィードバック音をたてている。ははぁ、これはもしかして吉村氏がよく言う「地と図の反転」みたいのを狙っているのかな、と思っているうちにBGMが消えて開演。


吉村氏のソロは3セット。はじめの2セットはフィードバック音の“ライブ”というか“生演奏”(...変な表現だな...)というか、その場で実際に生成されている音で、3セット目はその場で録音されていた音を再生するだけ、というパフォーマンスだったと思う。違うかな?


徳永氏のは、間を多く取った断片的なフレーズ+たまにロングトーン、というソロ。いわゆる“音響”系の特殊奏法などは使用せず“普通”の楽音でメロディの断片をぶつ切りに吹いて時折り伸ばす、という展開だった。....のだが、後に他所様のブログでの徳永氏のコメントで実は「ミスティ」だったことが判明。うわー、俺全然気付かなかった!ハズカシー(赤面)!

はぁ....なんてこった....orz


言い訳を言わせてもらうと、徳永氏がフレーズを途切れさすのに合わせてこっちも意識を切っていたので音の繋がりを聴いていなかったのではないかと....いや、これはウソだな、後付けの屁理屈だな....。単に聞き取れてなかっただけだろう。


大谷氏は、最近こういうのに凝っているというMCに続いて戦前の古いスタンダードナンバー、ビリー・ホリデイの「ラヴァーマン」等を。いわゆる“ブロウするサックス”ではなく、レスター・ヤングやポール・デズモンドを思わせる柔らかなトーンで、主旋律をそれほど崩さず丁寧に吹く、という印象の演奏。ただしジャズ色は薄い。ジャジーさを脱色したスタンダードナンバー、という感じ。サックス奏者がライブ前に指慣らしにハラハラと吹くのをそのまま“本番”でやっているような演奏だが、それがなんか良い感じだった。俺は大谷氏のこういう演奏を聴くのは初めてだ。


休憩中、再び吉村氏のフィードバック音が流される。休憩時間が終わりトリオ演奏(?)になるといったん吉村氏はフィードバックをオフにし、ヘッドフォンをつけてスタンバイ。徳永氏はステージの端に椅子に腰掛け、大谷氏は前のほうでステージを左右に歩きながら演奏。

最後に、大谷氏・徳永氏がロングトーンを吹き合って倍音のモアレ模様を描いて終演。


こんなかんじだったかな。ちょっとうろ覚えだったけど。サックス2人の演奏はとても良かった。偶然か意図したものかは分からないがテニスのダブルスの前衛/後衛みたいな形になってて、それがまた音的にも面白く形で反映されていたし。大谷氏が動く事によって、徳永氏の音が、陽光が木の葉で遮られるようにわずかに翳ったりまた現れたりするの。これは本当に微妙な違いだったが...。


終演とともに、吉村氏がフィードバック音を再び鳴らす。トリオ演奏中、“無音”を“演奏”した、ということなのだろう。そこらへんの経緯は、吉村氏の日記に詳しい。
http://d.hatena.ne.jp/andsoon/20071010


今回の吉村氏のパフォーマンスの意図はある意味“分かりやすかった”し上記の日記の思考実験も興味深い。ただ、それが客として“面白かった”かどうかは、全く別の話だ(笑)。じゃあ“面白いとは何か”という問題にもなってくるのだが....。


吉村氏は、今後はこういうフルクサスや「具体」のハプニングみたいな方向にずんずん進むのだろうか。だとするともう、マイクロフォンやヘッドフォンも不要になっていくのだろうか。今後、マイクロフォンとヘッドフォンとあのフィードバック音は、吉村氏にとって何になっていくのだろうか。ヨゼフ・ボイスにとっての“脂肪とフェルト”みたいなシンボル的な意味?吉村氏がいつも身に着けている帽子やマフラーと同じく“トレードマーク”的な表象?それとも「あの音が好き」というフェティッシュな興味?別に絡むわけでもなんでもなく単純に疑問として。


参考:他の皆様のブログなど。
http://d.hatena.ne.jp/note103/20071008/p1
http://blog.livedoor.jp/eugene416/archives/51046671.html