大友良英ギターソロ

id:otomojamjam
http://www.doubtmusic.com/new.html
http://japanimprov.com/offsite/offsitej/index.html

東京、代々木「オフサイト」午後7時30分開場、8時開演
『ギター・ソロCD発売記念』

  • 大友良英:accoustic guitar(Gibson J シリーズと思われる、型番不詳)、E-bow

いやはや、凄い入りだ。こないだのキッドアイラックに続き、オフサイトでお客さんが行列してるのを見たのなんて初めてだ。
伊東氏いわく「入りきれないかも...」との危惧があったにもかかわらず、何とか全員入場。俺の後ろには三味線の田中悠美子氏、最後列には浜田真理子氏の姿も。
大友氏の雑談めいたMCから演奏開始。

前半

  1. ミスティ(エロール・ガーナー
  2. Vox Humana(カーラ・ブレイ
  3. ブルー・カイト(青い凧)(大友良英
  4. 風花(大友)
  5. カナリア(大友)

後半

  1. 曲名不詳(ジョアン・フェルナンド)
  2. ごめん(大友)
  3. 女人、四十(大友)
  4. コマ(杉本 拓)
  5. インプロヴィゼーション

という演目で、大友氏のリリカルな映画音楽作曲家としての面を前面に打ち出した内容になった。
サントラ作家としての大友氏の仕事は、ここらへん↓
http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=ps&id=1359

ギターは大友氏と同い年のギブソンのオールドギター(J-45とかいうのか?)で、とてもよい音をしていた。高音の伸びが美しい、とはいえマーチンのフォークギターのような倍音が多いキラキラした音ではないのだが。
大友氏はエレクトリックギターもギブソンばかりなので、ギブソン党なのかと思っていたら、喋りによるとこのギターを入手したのはまったくの偶然であるらしい。

大友氏のギターは、訥弁というかヘタウマの魅力というか、はっきり言って決して上手いという演奏ではないのだが、そこが味というところか。

「ミスティ」の後、聞き覚えのあるリフを弾き始めて、演奏中、ずっとなんだったっけこの曲、と思っていたら、カーラ・ブレイの曲だったのであった。
俺、この曲はヴィブラフォンゲイリー・バートンの「Dreams So Real」(1975, ECM)でのヴァージョンが好きだった。ギターがミック・グッドリックとパット・メセニー、メセニーは当時はまだ若造扱いで、グッドリックのソロが凄く良かったなぁ。

その後、おもむろにギターにプリペアを施して、E-Bowで音を伸ばしながら弾き始め、「青い凧」。それにしても、E-Bowって、アンプを通さなくてもけっこう音が出るものなのね。
プリペアして出すゴングや鐘のようなサウンドは、エレクトリックギターにリングモジュレータを通して出す音(横浜BankArtでの韓国勢とのセッションや、こないだの新宿ピットインでも使用)にも似ている。最近の大友氏のマイブームなのか。

後半の、ジョアン・フェルナンドという人は全く不勉強で分からず。名前からしてスペインかポルトガルの人?

杉本氏の曲は、いかにもという感じの、聴く側が音の流れを把握できないほど間をあけて「ポツ..........ポツ...........」と音が置かれていくような曲。

最後は、またプリペアを施しての、やや長尺の即興演奏。これで終演。


終演後、CDを買おうと思ったのだが、オフサイトの2階はもう階段まで人が溢れ返っていてとても入れそうもなかったので(床が抜けないかと心配になった...)早々に退散。
また改めて買うことにしよう。

それにしても、あそこで久しぶりに“普通の楽器の普通の演奏”を聴いて(笑)改めて思うのは、オフサイトの残響の良さだ。よく響くがコンクリート打ちっ放しの建物ほどには響きすぎない。ちょうど“いい塩梅”だ。偶然にもあの建物は、微細な音の細かなニュアンスや倍音、サワリ的ノイズまでがよく聞こえる響きを持っていたわけだ。それが、20世紀末〜21世紀の「Improvised Music from Japan」の音が生まれ育まれる揺り籠や繭の役割を果たしたことは間違いがない。
様々な制約のあったあの場所だが、同時に様々な偶然が重なって、新しい音楽と新しい音の聴取スタイルを生み出していったことは、とても興味深い。それが後から回顧するとまるで必然だったように見えるのは、これが、“時代を引き寄せた”ということなのではないかと思える。
ニューヨークで、1940年代にはMinton's、1970年代にはCBGB、1980年代にはKnitting Factoryがそうであったように、Off Site は伝説的な場所になっていくのだろうか。


追記
大友氏からいただいたコメントによると、ギターはLG1というモデルとのこと。
http://d.hatena.ne.jp/otomojamjam/20050220