上村なおかソロダンス「一の百」

http://www.naoka.jp/

(通し券で2/5、2/6通ったのだが、ほぼ同一内容だったのでこちらに二日分まとめて記します)

上村なおか氏の名前を初めて知ったのは、「Plan-B」の会報で、ダンス白州での踊りについて合田成男氏が誉めていた記事なのであった。その後、斎藤徹氏&バール・フィリップス氏の 、"Two of the Lions" ツアーで、、ギャラリー椿でのパフォーマンスで拝見したのが最初。
そのときも手足にペインティングされて踊っていて、とても可憐で美しかったので、是非一度公演を観てみたいと思っていたのだった。

  1. 定刻どおりに暗転。
  2. 床に楕円形に広げられた毛氈や長襦袢のような色の真紅の布、中央で胎児のようにうずくまる上村氏。上にはゆったりとした膝丈のワンピース(すいません、ここら辺、詳しくないもんで...)。手足にタトゥのようなペインティングが施してある:ミサンガのようだったり、エジプトのホルス神の眼みたいだったり、植物の長い葉みたいだったり。髪は細かく編みこんだドレッド風にしてある(東南アジアの観光地で女の子がよくやられちゃうような)。ゆっくりと腕と脚が上がって、胎児のような動き(要は子宮?)から開演。
  3. 浄瑠璃節のような三味線と女声による唄。上半身起き上がる。唄の調子からも、どうしても浄瑠璃の人形のような印象をもってしまう。唄の続く間、紅い布の中で踊りつづける。
  4. 唄の終わりとともに布の外に踏み出す。静かに舞台を巡る踊り。やはり日本舞踊や浄瑠璃の人形を連想させる。おそらく、腰がほぼ一定の高さで固定されていて、手踊り中心の表現であったことがそのような印象を抱かせたものだと思われ。
  5. 会場の四隅には床にPAスピーカーが据えてある。ゆっくりと動いて、横たわり、スピーカーの一つにつま先を触れる。と、いきなり大音量のハードロック&グランジの洪水に晒される。のけぞって、激しい動きの踊りに移行。
  6. 痙攣し、床をのた打ち回るような踊り。冒頭の紅い布を被り、体や頭や脚にに巻きつけ、回転
  7. そのまま布を被って舞台奥、客先の雛壇を登っていき、最上段でバッタリと倒れこむ、後方には抜け落ちた紅い布、突然の静寂。
  8. ゆっくりと立ち上がる、クラシックのピアノ+ヴァイオリン曲(曲名不詳...)
  9. 打って変わって静謐な踊り。ロックとともにの踊りがデモニッシュな修羅的なものだとしたら今度は天使的な。ゆっくりと雛壇を後ずさって降りてゆく。十字架を思わせる証明の中、ついに雛壇を降り切り、舞台を横切り、反対側の壁まで。壁に張り付けられるようにして静止。
  10. ミュージックコンクレート的な、SE+音楽の断片が交互する音響。ゆっくりと動き出す。今度はいわゆるコンテンポラリーダンス的な動き中心。キリリとした澄んだ眼差しが、少女のようなほっそりした身体の腕や脚から、突然筋肉が盛り上がり身体を弾き上げる動きが、不思議と美しい。
  11. ミュージックコンクレート的な音響は、徐々に、サックス(ホルン?)を中心とした、長く静かな音響のループに置き換わってゆく。不思議な宗教音楽のような。その中、ワンピースの裾を靡かせて永遠に廻り続ける上村嬢....。音量が上がるとともに暗転、終演。

上記に記したとおり、白く細い身体に、纏わりつく紅い布、子宮と経血、といった、けっこう女性性を打ち出した表現になっていたと思うが、それがいわゆる暗黒舞踏系の舞踏にある“血と土着と情念”にならずに、ヒリヒリとした思春期の慄きを想起させるところに特長があるという印象を受けた。
ハードロックの爆音が鳴り響く中でスピーカーにつま先で触れながら反り返る所など、結構明白に性的な暗喩を表わすのだけれど、それが決して下品にならずに美しい表現に昇華しているところは、この人の美質なのだろう。

はっきり言ってファンになりました。