カール・ドライヤー@多摩センター パルテノンホール

裁かるるジャンヌ」 ※無声映画(演奏付き)
作曲・演奏 : 鈴木治行(電子音+α)

凄ぇ街だな、京王多摩センターって。
丘を造成して、駅前から「パルテノン多摩」という文化施設まで、二重構造というか二階建ての街が続いてるのね。もの凄く人工的な印象。左手にはサンリオピューロランドが聳えてるし。

閑話休題

舞台上には中央のスクリーンを挟んで向かって左に二人・右に一人。それぞれ銅鑼・数種のパーカッションを用意していた模様。左手に陣取った鈴木氏の前にはミキサーかDTMのコンソール、背面には大太鼓。

  • 開映とともに鈴木氏が大太鼓を打ち鳴らす。
  • 冒頭、ジャンヌ・ダルクの裁判記録の写本が映るとともにページを捲るようなノイズ。
  • ジャンヌが異端審問裁判に引き出されてくる場面に合わせて、銅鑼と鐘で、教会の鐘を思わせる(ただし不穏な)音。
  • ストーリー進行中も、鐘・銅鑼など金属系打楽器による、歌舞伎でいう“ツケ音”のような音の被せかた。
  • 時折り、接触不良音系のノイズがブツブツと入るがこれがSPレコードや古いトーキーに入っているノイズみたい。

ただし、“ツケ音”的といっても、単なる効果音付けとは違って、ズレてたり唐突だったり何か意味不明だったりするあたりは、流れをわざと遮ったり断ち切ったり邪魔したりといった鈴木氏の作曲作品と通じるところも。

なんとなく印象として、D. クローネンバーグの最初期の作品「クライム・オブ・ザ・フューチャー」を思い出した(←さすがにAmazonでもヒットしない(笑))。ぜんぜん違うんだけど、前衛的だし、モノクロだし、あれにもちょっと宗教的なモチーフ出てくるし、唐突に電子音が被さってくるし。

それにしても、「裁かるるジャンヌ」は異様な映画だ。

  • 登場人物の顔のアップが延々と続く。普通、戦前のサイレント映画って基本的には舞台劇を撮影したようなフレーミングのものが多いと思うのだが。それが異様な緊張感を醸しだしている。
  • 印象としては、歴史ものの映画というよりは表現主義やシュルレアリズムのサイレント映画に近い。多分影響を受けているのだろう。
  • 異端審問官の人々、全員キャラが濃すぎる。ブリューゲルボッシュの描く人物が動いてるみたい。
  • ジャンヌ役のお姉ちゃん、眼がイッてて、はっきりいって怖い。特に神秘体験を語るときの表情は完全に“憑かれている”ヒトだ。

いや、これをサイレントのまま見続けたとしたら、きっとかなり辛かったに違いない。その意味で、鈴木氏の“劇伴”は作品を引き立てていて良かった。決してドライヤーを“矮小化”してはいなかったと思いましたよ。